「ジャクソンホール会議」パウエルFRB議長はさらなる利上げの可能性を強調したが、逆に市場では「利上げは年内で終了」の見方が強まった

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   【米国経済の動向】2023年8月24~26日に米国のカンザスシティ地区連銀主催の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開催され、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は25日の講演で、インフレを確実に抑制するためにさらなる利上げを実施する用意がある」と発言した。

インフレ目標の2%への回帰...FRB、政策金利が十分に高いとは結論付けていない

   パウエル議長は、現在のインフレの状況について、「この1年、金融政策を大幅に引き締め、インフレがピークから鈍化したのは歓迎すべき動向だが、依然として高すぎる」との認識を示した。

   そのうえで、今後の利上げの可能性については、「実施すべきかどうかは、慎重に進める」としながらも、「適切であれば、さらなる利上げを実施する用意がある。インフレがFRBの目標に向かい持続的に低下していると確信するまで、金利を制約的な水準に維持するつもりだ」と述べた。

   パウエル議長の講演内容は、FRBが依然としてインフレが目標の2%に回帰するために政策金利が十分に高いとは結論付けていないことを明確に示す内容だった。

   この講演を受けて、特長的だったのは市場の受け止め方だろう。

   ただ、パウエル議長は同時に、次回9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利を据え置く可能性があることも示唆している。

   昨年のジャクソンホール会議では、パウエル議長が講演でインフレ抑制をやり遂げる姿勢を強く示したことで、予想以上のタカ派の発言と受け止められ、講演後に長期金利が上昇し、株価が大きく下落した。

   今年の講演も内容的には、昨年と同様の趣旨だったため、市場では講演内容が伝わると、長期金利は上昇し、株価は下げに転じた。しかし、その後の動きは昨年とは別だった。

経済指標の結果に、再び利上げを促すようなサプライズなものが出ない限り...

   たしかに講演内容は、パウエル議長のインフレ抑制に対する強い意志を示すものだったが、市場では金融引き締め(利上げ)政策の終了観測を覆すことができなかった。むしろ、「利上げは年内で終了」との見方が強まった感がある。

   ひとつには、パウエル議長が次回9月のFOMCで、政策金利を据え置く可能性があることを示唆した点も、市場の年内での利上げ終了観測に結び付いた側面もあるだろう。

   結果、パウエル議長の講演後に下落に転じた株価は、再び上昇に転じ、NYダウは前日比247ドル高で取引を終えた。

   大きなイベントだったジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を、その内容がさらなる利上げの可能性があることを強調したものだったにもかかわらず、無事に通過したこと、さらに、次回9月のFOMCでの利上げがないとの見方が強まったことで、米国の利上げ観測は、目先、相場の材料としての重要度は低下しただろう。

   むしろ、米国の経済指標の結果が、再び利上げを促すようなサプライズなものが出ない限り、市場では利上げは年内で終了という見方を既定のスケジュールとして捉えていくものと思われる。(鷲尾香一)



【プロフィール】
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト


元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。

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