「社員みんなで会社を作っていこう」「社長が全員の名前を知っている」
それにしても、会社を高く評価しているにもかかわらず、なぜ辞めるのだろうか。トップ30社を計8項目の評価スコア平均で、企業規模を問わない全体の評価スコア平均と比較分析すると、面白いことがわかった。
まず、新卒入社者よりも中途入社者による投稿が比較的多いという特徴があること。さらに、中でも「社員の士気」「20代成長環境」「人材の長期育成」のスコアは1点以上の差をつけて高いこと。また、「風通しの良さ」も1点近くの差をつけて高評価となっていた【図表2】。
そして、具体的に元社員のクチコミをみると、「会社の仕組みづくりに自分も関われる」「社員に一体感があり、フラットである」「自身の成長を実感できる」といった声が見られた。
少数精鋭だからこそ経営層との距離が近く、会社が成長する過程や社員が一丸となってミッションに向かう様子を感じることができるようだ。こんな風に――。
スカイライト コンサルティング「社員みんなで会社を作っていこうという風土があり、コンサルタントという職種とも相まって、社員の自主的な会社の仕組み作り、制度作りが積極的に行われていました」(コンサルタント、男性)
アクシスコンサルティング「『全社利益』『顧客貢献』を重んじる文化が浸透している。社内の顔色をうかがうのではなく、常にマーケット・顧客視点を貫くことが経営だけではなく、現場まで浸透しているため、大企業出身の自身にとっては、よい意味でとてもギャップがあり、心地良い環境であった」(キャリアアドバイザー、男性)
フィードフォース「働いているうちに会社が大きくなり、社員が増えるのは見ていて楽しかった。これが働きがいだともいえる」(開発部、男性)
キャンバス「経営・マーケティング・エンジニアリングの距離がとても近い。手触り感をもってプロダクト成長させている実感がとてもある、学びもある」(事業開発、男性)
サーバーワークス「組織体制がフラットであり、誰しもが意見を言える環境が整っていて素晴らしいと思います。縦割りの組織ではなく、部門をまたがっての意見も活発であり、透明性が高い組織だと感じておりました」(エンジニア、男性)
ハブ(飲食)「正直な経営を行っている。嘘をつかない。これに関しては非常に強く社員間で共有がなされており、特に社内の賞罰に関しては全社で即共有する動きがある」(店長、男性)
ウィンキューブホールディングス「裁量権が大きいので、早いうちからさまざまな業務を経験することができます。早いうちから経験を積んでビジネスパーソンとしてキャリアアップしたい、マーケティングスキルを身につけたい、という方にとっては、とても経験を積みやすい環境」(マーケティング事業部、女性)
三洋貿易「風通しがよく、社長は基本的に全員の名前を覚えている。部によるとは思うが、基本的にはしっかりとした根拠があれば、年次・年齢問わず意見を尊重されるため、個人の裁量はある程度与えられる」(営業、男性)
NHK大河ドラマ「どうする家康」は、弱小国・三河の徳川軍団が強国の武田、今川、そして豊臣を倒して天下をとる物語だ。リーダー家康(社長)と家来たち(社員)の間では、自由に意見を言えるどころか、本多正信のように主君を裏切っても才能があれば重用される、超フラットの人間関係が描かれる。
やる気と能力中心主義なのだ。卒業する人も気持ちよく会社を去り、それを承知で企業も温かく育てる。「小さくでも、いい会社」とは、人と会社が一緒に成長する経営をするものだろう。
調査は、2020年以降に退職者からの投稿が5件以上ある、従業員数300人未満の8045社(6万7064件)のクチコミを対象データとした。(福田和郎)