漁業者の反発根強かった原発処理水の「海洋放出」に...中国、「想定外の強硬策」日本の水産品全面禁輸 新たな政治問題に、問われる岸田政権の「外交力」

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中国向け水産物で最も多いホタテ、価格低迷が始まる アワビも産地取引価格が約3割下がる...中国の措置の影響大きく

   そのなかで、中国の「日本の水産品全面禁輸」が関係者に与えた衝撃は大きい。

   すでに7月から日本産水産物の放射性検査強化で、鮮魚などの輸出は実質的に止まるなど、影響が出始めていたが、全面ストップとなれば影響は計り知れない。

   農林水産省によると、2022年の水産物の輸出額3873億円(対前年比28.5%増)のうち、中国が22.5%の871億円と、国・地域別で最も多く、続く2位の香港(755億円)と合わせ、全体の4割余りを占める。

   中国向けのうち、467億円と品目別で最も多いのがホタテ。国を挙げて取り組む農林水産物・食料の輸出促進の優等生といわれるが、22年の年間輸出総額911億円の半分以上が中国だ。すでにホタテの価格は低迷し始めといるという。アワビなどはこの間、産地取引価格が3割ほど下がり、中国による一連の措置の影響が大きいと言われる。

   放出開始・中国の禁輸発表から一夜明けた25日、松野博一官房長官は風評対策として設けた計800億円の基金をもとに、販路開拓などを支援すると表明したが、むろん、具体策はこれから。

   首相は24日夜、「中国側に対して即時撤廃を求める申し入れを行った」と語気を強め、25日の閣議後の閣僚の会見では「全く科学的根拠のない非論理的な対応だ」(河野太郎消費者担当相)など中国側への批判の声が相次いだが、批判して解決する話ではない。

   首相は「科学的根拠に基づき、専門家同士が議論していくよう働きかけていく」と、この間使い続けるフレーズを繰り返すが、「中国の決定が政治的なものであるなら、もはや首脳レベルで解決を探る以外に手だてはない」(大手紙政治部編集委員)との見方が強まっている。

   処理水放出問題は国内の原発の是非を含めた対立の問題に、岸田政権の外交力が問われるという新たな問題が加わった。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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