制作企業1社当たり平均売上高は8億6400万円 「増収」が44%、「減収」が21%
また、2022年の制作企業1社当たり平均売上高は、8億6400万円だった。業績動向では、全体で「増収」が44%、「減収」が21%と、増収が減収を大きく上回ったという。
制作態様別に平均売上高をみると、直接制作を受託・完成させる能力を持つ「元請・グロス請」では、2022年の平均売上高は16億6700万円で、前年(15億5300万円)を約1億1400万円上回って2年ぶりの増加に転じるなど、過去10年では最高を記録したという。
なお、業績動向では、「増収」が過去10年で2番目に大きい54%、「減収」は21年から15ポイント低下した25%。損益面では、「増益」(49%)が過去20年で2番目に大きかった一方で、「赤字」が34%になるなど、元請間における収益力の「二極化」の傾向がある。
このほか、アニメ制作ではこれまで主軸だったテレビ放送からVODへと配信チャネルの多様化が進んでいるのも特長だ。
同社では「VOD運営大手が独自作品の制作に巨額の資金を投じて囲い込みを図るなど、製作委員会の組成が前提だった従前のアニメ制作モデルと異なるケースも出てきた」と指摘している。つづけて、次のような点をメリットにあげている。
「こうした制作モデルは1社が負担するリスクが大きい半面、関連グッズなどIP収入の最大化も期待できる点がメリットとなる。
資金面や制作能力など課題はあるものの、低賃金や過重労働問題の原因となってきた低収益の脱却策として、制作会社が積極的にIPを保有する制作モデルが今後有力な選択肢として広く浸透する可能性がある」
ただし、VOD向け企画作品の増加に関連して同社では、以下の点を懸念としてあげている。
「VOD向け企画作品の単純な増加は、テレビアニメや劇場版向けで既にひっ迫している制作現場の人手不足や過重労働を助長する危険性もある。また、ヒット作やIPの有無、関連収益の動向がVODの会員数に左右される点は、制作力や企業規模によって元請間でも収益格差を広げる可能性がある」
なお、この調査は同社の信用調査報告書ファイル「CCR」(190万社収録)ほか外部情報をもとに、アニメ制作企業を対象とした業界調査を行ったものだ。同様の調査は2022年8月に続き8回目。