まさか私が保険営業に?!総務の募集のはずが... それでも「選ばれる」営業となれたワケ【尾藤克之のオススメ】

   シングルマザー・資格なし・経験なしの工場パートから、ファイナンシャルプランナーへステップアップした極意とは? 働く女性なら必ず抱えるであろう問題(家族の理解、職場の人間関係など)を、著者の実体験をもとに解決に導く、そんな実践書を紹介します。

『働く女性がしたたかにしなやかに生き抜く仕事術』(下澤純子著) 合同フォレスト

営業募集とは知らずに面接に!

   著者の下澤さんは、大手生命保険会社の入社面接に行ったとき、面接官に「カモがネギしょってきた!」と言われたそうです。カモネギとは、「好都合であること」「獲物がまんまとやって来ること」を意味する言葉ですが、どういうことでしょうか。

「当時はまったく意味が分かりませんでした。『小さいお子さんがいる方大歓迎』という生命保険会社の総務募集の新聞広告をみつけたのです。ここなら自転車で5分もあれば通えると。でも、面接に行ったその職場は何とも不思議な光景でした。中年の女性が自分の席で口紅を塗っている。それぞれの机に鏡が......」(下澤さん)
「事務所の小さな会議室に通されました。『じつはこの求人、総務でなく営業なんですよ』。確かに営業職募集の隣に吹き出しで『同時募集! 総務』と書いてあったけれど。どうやら、私のように総務目的で面接に来た人に営業職を勧める、といった作戦のようで、もちろんこのときにはまったく気が付きませんでした」(同)

   だから、「営業はできないので......帰ります」「話が下手だし、人に保険を勧めるなんて絶対にできないです......」と下澤さんは帰途につこうとします。しかし呼び止められました。

「『総務は2週間の短期募集なんです。それでもよろしければ来ませんか?』 時給1000円か。日給分がおかず代になる! 2週間の間にほかの職を探そう! 総務の仕事に通うたびに通されるのは、面接をした会議室でした。指示されたデータの入力業務は1時間で終わってしまいます。仕事の大半が、所長の研修でした」(下澤さん)
「どうして私にそこまで詳しく研修するのだろう、と思ったこともありましたが、保険の話は、なぜかすんなり私の頭の中に入ってきたのです。そして、自分の加入している保険がとても心配になり、家に帰るとすぐに保険証券を引っ張り出して確認をし、3日目には保険証券を持って出勤していました」(同)

営業成果を出すためのコツとは?

   ここから、下澤さんの保険キャリアがはじまります。しかも、いつの間にか、会社に通うのが楽しくなっていました。さて、保険営業に紹介案件はつきものです。しかし、あまりガツガツやると嫌われます。はたしてどのような営業スタイルが理想なのでしょうか。

「講座終了後にアンケートに答えていただくと、『紹介だけで仕事が回っているようになりたい』という回答が多くなります。契約までに時間がかからないから、新規開拓の必要がないからという理由によるものでしょう」(下澤さん)
「紹介が増えるきっかけは圧倒的に口コミです。『全く分からない自分にも分かるように説明してくれた』『出不精な夫のために、来店型にも関わらず遠くまで足を運んでくれた』『自分のことを考えてくれて、自分専用の保険を作ってくれた』『全く売込みを感じなかった』『悩みを聞いてもらった』。決して大した理由ではありません」(同)

   保険営業は決して楽ではありません。営業効率を考えればこのようなアンケート結果も理解できます。では、紹介を獲得するための重要なポイントについて聞いてみましょう。

「紹介の場合、新規開拓をしていないので、人間関係ができていないところから入っていきます。そこが苦手な人も多いはず。実は私の場合、ずっと応援していただいているお客様は、紹介ではなく、新規開拓からお客様になった人ばかりなんです。そして、重要なのは、基本的に紹介をいただいたら退職、転職はナシです」(下澤さん)
「責任も背負うことになりますが、紹介は『信頼』と『実績』から生まれます。紹介が少ないのは、『信頼』と『実績』がまだ足りていないからです。保険営業が交流会に参加しても難しい理由がここにあります。相手の立場になって考えるなら、参加して知り合っても、本当に信頼できて実績のある人でないと紹介が出しにくいのです」(同)

   本書は、生命保険業界を知り尽くした下澤さんが語る実践書です。過酷な営業ノルマで厳しいとも言われる、保険営業の「選ばれるヒント」が見つかるかもしれません。

◆最後に...

   じつは、下澤さんと私は10年来の友人です。下澤さんは自らの経験を踏まえ、がん患者の啓蒙活動をおこなう「NPO法人ピュアスマイルスタジオ」を数年前に立ち上げました。定期的にセミナーを開催(次回は2023年10月4日)しているので、関心のある方はぜひお調べください。下澤さんの今後のご健勝とご活躍をお祈り申し上げ、追記をさせていただきました。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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