日本の食材は世界人気、あらゆる国に販路を広げよう
一方、同欄では中国国民にも理解してほしい、その処理水の「安全性」について、岡本孝司東京大学教授(原子力学専攻)がこう解説した。
「今回放出された、薄められたALPS処理水のトリチウム濃度は100ベクレル/リットル以下でした。直ちに拡散しますので、もともと海水に含まれているトリチウムの濃度(0.1~1ベクレル/リットル)と同じになります。東京電力や環境省など、様々な機関でモニタリングを強化していますので、これらの結果がどんどん公開されていくと思います。
科学的にはまったく影響がありませんが、まったく影響がない事をモニタリングで確実に確認していくということになります。なお、我々の身の回りにも、トリチウムは存在しています。例えば雨にも0.1~1ベクレル/リットルのトリチウムが含まれています。また、トリチウム以外の放射性物質については、2か月以上の期間をかけて、すでにチェック済みです。法令で決められている値よりも十分に小さい値です。これらの情報は、ホームページで公開され、随時更新されていきます。『処理水ポータル』をぜひ参照ください」
そう呼びかけた。
ただ、処理水問題を「対日外交カード」に使う中国政府に処理水の安全性を訴えても、通用しない点がやっかいなところだ。
そこで、同欄では日本総合研究所チーフエコノミストの石川智久氏が、中国以外の国々への市場開拓を訴えた。
「確かに、中国は人口も多いものの、貿易を外交カードに使う中では、安心して貿易できる状況とは言い難くなっています。こうした中では、日本の農業輸出においては、輸出先を多角化することが重要と言えます。日本の食材は、今や世界で人気であり、世界全体を市場に出来ると言えます。冷蔵や冷凍技術もレベルアップする中、かなり遠い国や地域にも輸出ができるようになっています」
と解説。そして、
「日本の経済安保の観点からは、中国1国に依存するのではなく、世界全体を貿易相手にすることが重要と言えるでしょう。一方で、中国は人口が多いために、農産物を自給できない状況になっています。貿易を外交カードにすることは、逆に中国の食料安保を損ない、中国にとってデメリットであることを認識する必要があります」
と今回の措置は中国にとってもマイナスだとした。