DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントラストフォーメーション)の人材採用や育成活動に、中小企業の経営者の8割以上が「取り組めていない」ことが、GreenとDigitalを活用した中小企業の変革を目指すフォーバルGDXリサーチ研究所(東京都渋谷区)の調べでわかった。2023年8月23日に発表した。
DXの推進は、中小企業の経営状況の可視化の実現のためには避けられないとされる。また、環境省はGXに取り組むメリットとして、光熱費や燃料費の低減や、社員のモチベーション向上や人材獲得力、資金調達力の強化をあげている。
同研究所は、「中小企業の経営者にはDXとGXを推進する意義があります」と指摘するが、中小企業の場合、「DX人材」「GX人材」が社内におらず、推進できないというケースが多いようだ。
人材採用・育成「できていない」DXが82.6%、GXは92.6%
調査によると、中小企業の経営者に、DX・GXの取り組みレベルを今より上げたいと思いますか(n-645)と聞いたところ、71.3%の人が「はい」と答えた。また、GXへの取り組みには、54.7%が「はい」と回答。大半の経営者がDX、GXを積極的に経営に取り組もうとしていることがわかった。【グラフ1参照】
また、DX人材・GX人材の採用や育成を進めていくための活動はできていますか(n=645)との問いに、DX人材については「まったくできていない」と答えた人が33.6%、「あまりできていない」は49.0%で、合わせて82.6%の人が「できていない」と答えた。
GX人材については、「まったくできていない」が49.0%、「あまりできていない」が43.6%で合わせて、じつに92.6%もの人が「できていない」と回答した。【グラフ2参照】
多くの経営者がDX・GXの取り組みレベルを上げたいと思っているにも関わらず、その人材を採用・育成できていないという結果となった。中小企業の多くで、DX・GX人材が不足していると推察される。
DX人材・GX人材、明確な人物像を描けている?
DX人材、GX人材の採用や育成が「できていない」という中小企業が多いなか、経営者はどの程度、自社に必要な人物像を描けているのか――。
調査では、DX人材・GX人材について明確な人物像は描けていますか(n=645)と聞いたところ、必要な人物像を「十分に描けている」と答えた経営者は、DX人材でわずか10.8%、GX人材ではさらに少なく4.3%だった。【グラフ3参照】
「ある程度描けている」と答えた経営者は、DXが71.2%、GXで72.3%だった。
フォーバルGDXリサーチ研究所は、
「人物像のイメージが不十分なまま、採用・育成を進めてしまっている企業が多いと推察されます」
とみている。
では、中小企業の経営者は、DX・GXに必要な人物像をどのように描いているのか――。
DX人材・GX人材の明確な人物像の描き方について聞いたところ、いずれも「不足しているスキルの補填」が第1位(DXが44.5%、GXが41.2%)となった。
次いで、「経営ビジョンからの逆算」(DXが27.7%、GXが21.6%)、「現場からの意見を聞いて」(DXが19.7%、GXが25.5%)が続いた。【グラフ4参照】
こうしたことから、 DX人材・GX人材の採用・育成には、「自社に不足しているスキルの補填を行える人材であることが重視されている」ようすがうかがえる。
「しかし、自社に不足しているスキルの補填を行えるという観点のみで進めると、短期的な課題解決のみに収まってしまい、中長期的な会社の目標に対し貢献できない可能性もあります。そのため、経営ビジョンから逆算し、中長期的に企業に貢献する真に必要な人材の人物像を設定する必要があります」
フォーバルGDXリサーチ研究所は、そうアドバイスしている。
経営ビジョンがある企業ほどDX、GXの取り組みが進んでいる
フォーバルGDXリサーチ研究所によると、DX人材・GX人材の採用・育成には、経営ビジョンの逆算が必須という。
そこで、「経営ビジョンを描けているかどうか」でDXの推進度、GXの推進度に差があるか、DX、GXの推進状況を、「ステップ3」=事業改革:事業戦略の再構築・新規事業の創出、「ステップ2」=情報活用:デジタル化の推進により得られた情報の利活用、「ステップ1」=意識改革:DX/GXに向けたデジタル化の推進、「取り組めていない」に分けて調べた。
中小企業の経営者(n-645)に、経営ビジョンの有無について聞いたところ、DXの取り組みレベルが「ステップ3(事業改革:事業戦略の再構築・新規事業の創出)」という企業のうち、ビジョンが「ある」企業は87.5%、「ない」企業は12.5%で、おおよそ9対1の割合であった。
これに対し、DXに「取り組めていない」企業のうち、ビジョンが「ある」企業は24.4%、「ない」企業は75.6%とほぼ2対8の割合となったことがわかった。
GXでは、 ビジョンが「ある」企業は75.0%、「ない」企業は25.0%と8対3の割合であるのに対して、GXに「取り組めていない」企業のうち、ビジョンが「ある」企業は36.8%、「ない」企業は63.2%と4対6となった。【グラフ5参照】
DX、GXとも推進度が進むほど、ビジョンがある企業の割合が多いことから、DX、GXを進めるにはビジョンが明確化されていることが重要と推察される。
同研究所の平良学所長は、
「時間と費用の制約、さらには具体的なスキル定義の欠如といった複合的な要因によって、中小企業の多くがDXとGXの推進に苦戦しているという現実が明らかになりました。こうした現状を打開するための戦略として、企業は自分たちが目指すべき未来を明記した『経営ビジョン』を策定し、その目標に合致する人材育成に注力すべきだと示唆されています」
とコメントしている。
なお、調査は全国の中小企業経営者を対象に、2023年6月12日~7月11日にインターネットで実施した。有効回答者数は、645人。