とうとう中国政府が海外への団体旅行を解禁! 日本だけでなく、アメリカやオーストラリア、イギリス、韓国などへの中国人の出国旅行が緩和されました。新型コロナウイルスの拡大で禁止されて以来3年半ぶりの再開に、早くも経済効果を期待する声が各国で広がっています。
日本でも、「訪日観光客が200万人増」といった衝撃予測が伝わる一方で、海外メディアでは「中国人観光客はそれほど戻ってこないだろう」といった見方も報じられています。
中国人観光客の「爆買い」は過去のものなのでしょうか。海外の観光地は、中国人観光客に頼らない「new reality」(新しい現実)に向き合い始めているようです。
豪メディア「中国人観光客が『爆買い』する時代はもう終わった」
中国政府が日本を含む主要国への団体旅行を解禁したニュースは、瞬く間に世界中に広がりました。台湾問題など、政治的には中国との緊張関係が続いているアメリカでも、経済界は大喜び!
ビザ取得などの関係で、本格的に中国人団体ツアーが再開されるのは23年秋以降とされていますが、世界中にチャイナマネーを落としてくれる中国人観光客がもたらす経済効果に、早くも期待値は爆上がりです。
一方、コロナ禍を経験した中国人の間で、海外旅行への意識が変化しているという見方も広がっている様子。英誌TIMEは、「団体旅行解禁の効果は限定的だろう」と伝えています。
China lifted a ban on group tours to overseas destinations but the effect of that is likely to be muted
(中国は海外へのグループ旅行を解禁したが、効果は消極的だろう:英誌TIME)
lift a ban:規制を撤廃する
mute:黙っている、限定的、弱い
「mute」(ミュート)は、音声を「ミュートする」という表現ですっかり日本語としても定着していますが、「弱い」「断定的」といった意味でも使われます。
この場合は、団体旅行解禁の影響が「断定的」、つまり「影響があまり期待できない」といったニュアンスです。
理由としてあげているのが、中国人の海外旅行に対する意識の変化です。パンデミックが国の経済だけでなく人々の精神に与えた影響は大きく、富裕層以外の一般中国人は、海外への旅行にまだためらいがある、としています。
外国で安全に過ごせるのかといった健康面や、友好的に受け入れてもらえるのかといった不安が先立っているらしく、中国旅行会社の調査では、回答者の58%が「まだ外国に行くつもりはない」と、海外旅行に不確かな思いを抱いていると回答しています。
また、中国国内で景気減速感が強まるなか、「高い旅行費用を払えない」といった理由で海外ではなく国内旅行を選ぶ人が増えているとか。コロナ前よりもお財布のひもが固くなっていることは事実らしく、国内旅行を楽しむ中国人が増えていると報じています。
さらに、オーストラリアの経済紙は、「中国人観光客が爆買いする時代は終わった」と、中国人観光客の変わりようを伝えていました。
The days when Chinese tourists would buy out an entire brand store were over
(中国人観光客がブランド店全体を買い占める日々は終わった:オーストラリア経済紙)
「ブランド店全体を買い占める」というストレートな表現がインパクトあり過ぎですが、お財布のひもが固くなった中国人観光客は、もはや「爆買い」はしない、という認識のようです。コロナ禍を経て、価値観が変わった中国人観光客のニーズも「買い物オンリー」ではなくなってきているのでしょう。
さらに、オーストラリアの観光業者は、「中国依存」からの脱却を図っていると伝えられています。中国が「ゼロコロナ政策」で海外渡航を禁止している間に、ニュージーランドやインド、ベトナム、東南アジア諸国からの観光客が増えており、中国からの観光客に大きく依存しない「new reality」(新しい現実)にすでに適応しているとか。
「株式ポートフォリオのように、観光業でも分散が必要だ」という専門家のコメントに思わず納得してしまいますが、チャイナマネーだけに頼る危険性をコロナ禍でさんざん味わった観光業者は、二の舞だけは避けたいのでしょう。
「中国依存」からの脱却は、地元観光業にとって好ましい傾向だと受け止められているようですから、中国人観光客に対して「もろ手を挙げてウエルカム」の状況は過去のものかもしれません。