「ブルーカーボン」を吸収源とするガラス製品を開発! 東洋製罐グループHDの挑戦【脱炭素銘柄をねらう】

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   大気中の二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを吸収して比較的長期間を固定化できる「吸収源」として「ブルーカーボン」が注目されている。

   ブルーカーボンとは、海藻、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林などの海洋生態系によって大気中から海中に取り込まれたCO2由来のcaptured炭素(CCS=CO2回収・貯留技術)をいう。

   金属、プラスチック、紙やガラスなどの素材を活かしたさまざまな包装容器を製造する東洋製罐グループホールディングス(東洋製罐GHD、5901)が、そんなブルーカーボンを吸収源とした新たなガラス製品を開発している。

ブルーカーボンによる隔離・貯留のメカニズムとは?

   国土交通省によると、「ブルーカーボン」は国連環境計画(UNEP)が2009年に定義したものだ。海藻、海藻藻場、湿地・干潟、マングローブ林などの海洋生態系によって大気中から海中に取り込まれたCO2由来のcaptured炭素(CCS=二酸化炭素回収・貯留技術)をいう。

   これにより、陸域生物によって吸収・貯留される炭素を「グリーンカーボン」、海洋生物によって吸収・貯留される炭素を「ブルーカーボン」と分け、吸収源対策の新しい選択肢として提示した。

   つまり、ブルーカーボンによる隔離・貯留のメカニズムは、大気中のCO2が光合成によって浅海域に生息する海藻など(ブルーカーボン生態系)によって吸収され、CO2を有機物として隔離・貯蔵する方法だ。

   そんなブルーカーボンに、東洋製罐グループホールディングス(GHD)が着目している。日本経済新聞(2023年6月3日付)に、「海の脱炭素 素材各社競う」の見出しで東洋製罐GHDに関する記事が掲載されていた。

   それによると、「素材企業のブルーカーボンの取り組み」と題したコラムで、東洋製罐GHDが「従来より水に溶けやすいガラス製品を開発。23年度から販売開始へ」と紹介。同社が、鉄分が海水に溶けだして海藻の光合成を促進させるガラス製品の性能を高めた、とあった。

   この新たなガラス製品は、全長数十センチメートルほどの長方形で、ガラスの組成・構造をアレンジすることで、CO2が海水に3年ほどで溶けるようにした。従来品は溶けるのに10年ほどかかり、海藻の成長促進効果を短時間で測定しにくいという課題があった。それを約3分の1に縮めることに成功したことで、CO2削減目標の達成に向けた実証実験などでも採用しやすくなる。

   記事によると、「従来品も含めて、港や岸壁の消波ブロックの表面に張り付けて海藻の成長を促す」とのことだ。

2050年「目指す姿・ありたい姿」に向けた戦略に「ブルーカーボン」

   東洋製罐GHDは、2050年の「目指す姿・ありたい姿」を、「世界中のあらゆる人びとを安心・安全・豊かさでつつむ『くらしのプラットフォーム』」と位置づけ、「多様性が受け入れられ、一人ひとりがより自分らしく生活できる社会の実現」「地球環境に負荷を与えずに、人々の幸せなくらしがずっと未来へ受け継がれる社会の実現」を目指して事業活動を推進している。

   「統合報告書 2022」によると、「中長期目標2030」、「中期経営計画2025」を、2050年の「目指す姿・ありたい姿」に近づいていくためのロードマップと位置付けている。

   とくに、「ブルーカーボン」については、「中期経営計画2025において取り組む内容」の「新たな成長領域の探索・事業化・収益化」で、「ガラス製品のブルーカーボン活用など環境対応型製品・サービスの開発など」と明記している。

   ブルーカーボンが、同社の2050年の「目指す姿・ありたい姿」に向けた戦略に、明確に位置づけられ、企業の進む方向が明確化されていることがわかる。

   東洋製罐GHDの株価を5年(中期)チャートでみると、高値は2018年12月の2703円、安値は20年10月の973円だった。23年8月24日現在の株価2390円00銭は、高値2703円の88.4%の位置にあたる。

   会社四季報最新銘柄レポート(8月9号)によると、東洋製罐GHDの今期経常利益は、前期比81.6%の増益を見込んでおり、好調。それもあって、現在の株価は今年1月の安値(1551円00銭)から839円00銭(値上がり率にして64.8%)の上昇となっている。

   「統合報告書 2022」には、

「2050年の『目指す姿・ありたい姿』と現状にはまだまだギャップがあり、それを埋めていくことは簡単ではありません。一足飛びに理想に近づくことはできないので、日々改善や新たな挑戦に取り組みながら一歩ずつ着実に前進していきます」

   とある。

   PBR(株価純資産倍率)は0.65倍と、東証が求める1倍を下回る「割安株」である。

   将来性も期待できるとなれば、「買い」といきたいところだが、東洋製罐GHD株の取得目標価格は5年チャートから、1600~1800円とみているので、年初来高値にある現在はしばらく様子見と考えた。(石井治彦)

【東洋製罐グループホールディングス 5901】
年初来高値 2023年8月15日●2407円50銭
年初来安値 2023年1月13日●1551円00銭
直近 終値 2023年8月24日●2390円00銭

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