あらゆる経済指標が総崩れ、中国はデフレに陥った?
7月の経済統計で、輸出や輸入、物価、個人消費などあらゆる指標が総崩れになったことを受け、中国がデフレ危機に入ったのではないかと警鐘を鳴らすのは、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之だ。
石黒氏はリポート「中国発のリスクイベントに目配りが必要な局面に」(8月21日付)のなかで、中国のCPI(消費者物価指数)とPPI(生産者物価指数)、そして不動産開発投資累計の推移のグラフを紹介している【図表2】。
これを見ると、足元の数字はいずれも下降線を描き、対前年同月比・同期比でマイナスになっていることがわかる。石黒氏はこう指摘する。
「ここにきて、中国経済の先行き不透明感が急速に強まっています。
7月の中国のCPIは前年同月比でマイナスに転じ、PPIも弱く、1~7月のマンション建設など不動産開発投資は前年同期比で、8.5%減少しており、足元の中国経済はデフレ圧力にさらされているようにもみえます【図表2】。
7月の新規融資は14年ぶりの低水準に落ち込み、金融機関の消極的な融資姿勢が目立っているほか、中国の金融大手の信託会社が顧客への一部商品の支払いを停止し、不動産開発大手の公募債が債務不履行に近づきつつあるなど、悪材料が山積しています」
今後はどうなるのだろうか。株式市場を中心に、石黒氏はこう説明する。
「こうした懸念を受けて、香港ハンセン指数は8月18日、年初来安値を更新し、直近高値からの下落率が20%を超えたことで『弱気相場』入りしました。中国の影響が大きい世界の企業で構成される株価指数も8月に入り10%超下落しており、世界の金融市場も中国発のリスクイベントに身構えつつあります。
中国リスクへの警戒が高まる状況下で、中国の中央銀行と金融規制当局は、景気回復を支えるために融資を増やすよう要請したことが、中央銀行の8月20日の声明で判明しました」
そして、こう結んでいる。
「デフレ圧力が強まるなか、多額の債務を抱える不動産業界の救済と低迷する消費を立て直す政策などで中国経済を浮揚させることができるのか、中国当局の政策手腕が問われています」
(福田和郎)