経営の立て直しへ、デロイトトーマツグループから専門家 だが、「惨状を救う一手は見当たらず」
ビッグモーターにとって痛いのは、窮状に手を差し伸べてくれる支援者が見当たらないことだ。
背景には、同社に対する世論の厳しい視線がある。いくつもの不祥事の中で、国民感情を悪化させるうえで影響が大きいとみられるが、店舗周囲の街路樹をわざと枯らしたとされる「除草剤疑惑」だ。
すでに複数の店舗付近の植栽から除草剤の成分が検出されており、現場からも「本社の指示だった」と認める声も相次いでいる。
自治体側は警察に被害届けを出すなど態度を硬化させており、産業界からは「こん状況でビッグモーターの支援に動けば、こちらが炎上しかねない」と本音が漏れる。
今後の焦点は、ビッグモーターが単独でどこまで営業を続けられるかに移っている。
関係者によると、ビッグモーターは300億円超える現預金を保有し、中古車や土地など市場で売却して、おカネに変えることが可能な資産も多い。
このため、取引金融機関の間では「すぐに潰れることはないだろう」との見方が大勢だ。
しかし、四面楚歌の状況が長期化すれば、話は別だ。
ビッグモーターはデロイトトーマツグループから専門家を招いて、経営の立て直しを図っている。
だが、同社に近い関係者は「惨状を救う一手は見当たらないようだ」と証言する。
ビッグモーターの全株式は兼重宏行前社長、長男の宏一前副社長ら創業家の資産管理会社が握っている。
社内外から「創業家が保有資産を提供しない限り、取引企業も国民も到底、納得できないだろう」との声が出るのも当然だ。
創業家が沈黙を続ける中、ビッグモーターの危機は深まっていく。(ジャーナリスト 白井俊郎)