「あの爆買い復活は無理?」中国団体客解禁に、過度な期待は禁物...エコノミストが指摘「中国人の購買欲、かなり低い」「日本人が旅行できなくなる」

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爆買いが期待薄の理由...経済悪化、消費意欲低迷、政府の締め付け

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また、「爆買い」してくれるだろうか(写真はイメージ)

   一方、中国経済の悪化から中国人の消費意欲が大いに下がっており、特に「爆買い」の期待は禁物だと指摘するのは、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト宮嶋貴之氏だ。

   宮嶋氏はリポート「中国人の訪日団体旅行ビザ再開による効果に、過度の期待は禁物」(8月16日付)のなかで、中国人観光客に過度に期待できない理由を3つあげている。

   第1に、アフターコロナで回復しつつある航空旅行客の統計から中国人の旅行先の推移を見ると、まだ近場に行く人が多いことだ。具体的には、香港、マカオ、タイ、シンガポールなどが先行しており、日本への回復は遅れている。理由として、コロナ禍前より日中関係が緊張していることがあげられる。

   つまり、かつてのように多くの中国人が訪れることは、あまり期待できないようだ。

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(図表2)中国の消費者態度と貯蓄意欲(ソニーファイナンシャルグループの作成)

   第2に、GDP(国内総生産)成長率の減速、若年層の過去最悪の失業率など、現在、中国経済は悪化しつつあり、中国の消費マインドはかつてないほど冷え切っている。【図表2】は中国の消費者態度指数と貯蓄意欲を示したグラフだが、これを見ても消費意欲(四角い赤の点線)が急激にダウンしているのがわかる。

   だから、訪日中国人が2019年の水準で買い物をすることは考えにくい。

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(図表3)中国株と訪日中国人の買い物代(ソニーファイナンシャルグループの作成)

   第3に、「爆買いブーム」が起こった2015年と現在では大きな違いがある。【図表3】は、中国株と訪日中国人の1人当たりの買い物代を示したグラフだが、両者には相関関係があることがわかる。2015年の「爆買いブーム」時には、上海総合指数は大きく上昇していた。

   株高により資産効果によって、富裕層を中心に日本でのショッピングが大流行した。当時は「代講」(訪日客や日本在住者が、日本製品を日本で購入して中国のSNSなどで転売すること)が、爆買いの火付け役となった。その後、中国政府の取り締まりが強化されていることも、当時と現在の大きな違いだ。

   というわけで、宮嶋氏はこう結んでいる。

「2015年時のような爆買いブームが再現する可能性は低そうだ。現状、訪日中国人客の団体旅行ビザ再開への期待は沸騰しているように見える。確かに日本経済、日本の観光にとってプラスとなろうが、その効果の大きさについては少し冷静にみておく必要があるだろう。
むしろ筆者(=宮嶋氏)が懸念しているのは、中国人客のさらなる増加が一部観光地域のオーバーツーリズム(観光公害)の問題を深刻化させることだ」

(福田和郎)

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