企業のSNS、半数以上が「運用していない」 運用企業の3割が「効果なし」

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   商品プロモーションから採用活動、イメージアップなどで幅広く活用される企業のSNS、御社は活用していますか?

   多くの消費者に情報を届けやすいSNSだが、東京商工リサーチが調査したところ、企業の半数以上にあたる54.8%で、SNSを「運用していない」ことがわかった。資本金1億円以上の大企業でも、53.1%が「運用していない」という。さらに、SNSを運用している企業でも3割が「効果得られない」と回答した。2023年8月21日の発表

   SNS全盛の時代にあって、BtoC企業を中心に一人でも多くの利用者を獲得するため、「SNSでいかにバズるか」、「好印象を植え付けられるか」は、企業にとって販売促進などの大きな課題だと思われていた。そうした中で、「運用しない」理由はどこにあるのだろうか――。

活用しているSNS トップは「LINE」、2位に「Facebook」

   調査によると、いろいろなSNSのうち、「自社でどのサービスのアカウントを現在、運用していますか?」(複数回答)と聞いたところ、活用しているSNSのトップは「LINE」で21.7%(1077社)だった。

   次いで、「Facebook」20.2%(1004社)で、トップとの差はわずか。第3位は「Instagram」の19.6%(973社)が続いた。

   SNSに取り組む目的・用途は多様で、活用は年々広がっている。自社のイメージアップや商品の認知度アップ、セールスだけでなく、SNSを通じて学生やその保護者らに事業活動や社員の働く様子をPRして新卒採用に活用するなど、多岐にわたる。

   そうしたなか、SNSを「運用していない」と答えた企業は、54.8%(2715社)と半数を占めた。このうち、大企業が53.1%(299社)、中小企業でも55.1%(2416社)が「運用していない」と答えた。【図1参照】

   自社でSNSのアカウントを持ち、運用している企業は45.1%(2232社)で、半数近くを占めた。ただ、一方で、半数以上の54.8%の企業はSNSを運用しておらず、大企業でも53.1%(299社)が運用していなかった。

   東京商工リサーチは、

「SNSはコンテンツそのものが直接売り上げに直結するツールではなく、メディアごとの特徴が異なるだけに、運用のあり方やリスク対応など、企業によって空気感は大きな差がある」

   と指摘する。

   また、従業員数別にみると、300人以上の企業で「YouTube」(29.4%)や「Instagram」(29.0%)の活用が他のレンジに比べて高かった。 動画や画像に掛かる編集などのコストは小・零細企業にはリソース面での負担が大きい。「こうした費用対効果が不透明な分野への取り組みに消極的な企業は少なくない」とみている。

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図1 「SNSを運用していない」と答えた企業は2715社(帝国データバンク)

SNSの効果「会社のイメージが向上した」がトップ

   また、SNSを運営している企業(有効回答数2044社)に、「SNS運営による効果は次のどれですか?」(複数回答)と聞いたところ、最も多かったのは、「会社のイメージが向上した」と答えた企業で32.2%(660社)だった。

   次いで、「自社の製品・サービスのイメージが向上した」が26.7%(547社)、「社員間のコミュニケーションが活発になった」の24.5%(501社)と続き、社内外への情報の訴求効果を評価している。

   一方、「従業員採用の応募者が増加した」は7.9%(163社)と1割未満にとどまった。対外的なイメージアップやサービスの認知には、効果を実感できている企業が一定数あった半面、人材採用への効果は限定的だったことがうかがえる。

   また、効果が明確である企業がある一方で、29.3%(599社)の企業が「特に効果は得られなかった」と回答。このうち、大企業が20.6%(49社)、中小企業で30.5%(550社)を占めた。SNSでの情報発信の方法を模索している企業は少なくないとみられる。【図2参照】

   業種別でみると、製造業が26.3%(158社)で最多。次いで、卸売業が20.7%(124社)、サービス業他が18.7%(112社)、建設業の14.6%(88社)と続く。一方、小売業は5.8%(35社)にとどまった。

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図2 SNSの効果、トップは「イメージが向上した」 一方で29.3%の企業が「効果得られなかった」

   新卒採用などで業務紹介ツールにSNSを使用する企業が散見されるなか、業種問わず、企業のSNSの活用は広がりを見せている。

   運用は企業によってさまざまで、菓子、清涼飲料水などの飲食料品製造のBtoC企業では、企業の公式アカウントのほか、商品それぞれに単体のアカウントを設け、キャンペーンや新商品等の告知を行い「ファンづくり」に余念がない。

   その一方で、

「BtoB企業のため対外発信は限定している」(卸売業)
「ホームページがあるので、SNSを始める必要は感じられない」(製造業)

   といった声も寄せられた。

   ただ、SNSの活用の広がりとともに、過激な表現やSNS担当者の私情、差別的な発言など発信による不祥事も後を絶たない。

   大企業やBtoC企業では、ホームページと複数のSNSの併用もみられる。同時に、PRの場が多岐にわたり、各メディアの特性を生かした効果的な情報発信が求められるものの、運用にかかる編集や管理などへの人的資源もネックになっている。

   同業他社とのコンテンツ制作の差別化は不可避となりそうで、企業規模を問わず、「効果は限定的」と言わざるを得なくなっている。ますます活用が広がると思われるSNSだが、こうした背景から、「企業の取り組みに大きな格差があることが改めて浮き彫りになった」(東京商工リサーチ)としている。

   なお、調査は全国の企業(資本金1億円以上を大企業、個人企業等を含む1億円未満を中小企業と定義)を対象に、2023年8月1日~9日にインターネットで実施。有効回答数の4947社を集計、分析した。

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