みなさんは「フランチャイズで独立開業!」と聞いてワクワクしますか?
アントレ(東京都港区)は2023年8月18日から19日にかけて、東京都貿易産業センター浜松町館で、「アントレフェア2023in東京」を開催した。出展企業を各日36社社以上を集め、多数の参加者がフランチャイズや代理店・業務委託などの独立開業の方策を探るイベントだ。
また、さまざまな業種・業態が並び、融資について日本政策金融公庫に相談する場面も見られ、参加者たちの「ホンキ度」が伝わってきた。
5坪で始めるコンビニバー「お酒の美術館」とはどんなビジネスなのか!?
アントレフェアとは、独立・企業・開業のためのビジネス情報サービス総合サイトを運営するアントレが行うイベントだ。
多くのフランチャイズ本部や代理店本部がブースを持ち、来場者と直接話すなかで、さまざまな業界の情報を集めることができる。また、資金調達や会社設立、起業の税務相談など、起業・開業に特化した専門家にもその場でご相談することもできるという。
さっそく各ブースを紹介していこう。
はじめに、話を聞いたのは京都や大阪、東京を中心に全国で展開している「BAR お酒の美術館」だ。このビジネスのユニークなところは、コンビニや駅、空港などで小規模の立ち飲みバーを開業できるところだ。
担当者の方にコンセプトを聞いてみると、
「あらゆる生活場面にバーを、という考えのもと色んな場所で小規模バーを増やしている」
という。
本部は、古酒買取販売「ゴールドリカー」も手掛ける「のぶちゃんマン」(京都市中京区)。「お酒の美術館」の出店は京都、大阪、奈良、東京など全国62店舗の広がりを見せる。
ビジネスモデルとして、コンビニ、駅、空港で5坪から10坪の敷地を借りて、さまざまな古酒や洋酒、カクテルをワンオペで提供するものになっている。
仕入れは酒類の買い取りをする「のぶちゃんマン」からの直販で、中間流通を通さない仕掛けだ。担当者によると、このイベント時点では、一般的には1300円程度が仕入れ値のサントリー角瓶が500円で仕入れられたり、2800円前後で流通しているサントリーオールドパー12年が1200円程度の安値で仕入れられたりすることが強みだという。
もちろん、場所を貸しているやコンビニにもメリットがある。バーでは基本的に酒類の提供のみとしている。
お酒の美術館のコンビニバーは食べ物の持ち込みを可としていることで、つまみの欲しいお客はコンビニで商品を買って食べながらお酒を楽しむことができ、コンビニへの売り上げにも貢献できるという。
最近、特に人気なのが駅構内のバーが一緒になった西大寺駅店(近畿日本鉄道)だ。連日たくさんの人でにぎわってるという。
担当者は、
「コンビニバーに協力してくれる店舗も、家賃収入を得られ、商品の売り上げ増にもつながるため、コンビニバーのメリットを感じてもらえると思う」
と話してくれた。
さらに、このフランチャイズで成功できる人の特徴を聞いてみると、
「バーテンダーが主な仕事になるので、お話が好きな人、お話を聞くのが好きな人が向いていると思います。売り上げが上がるようこちらもしっかりバックアップさせてもらいます」
という力強い言葉が返ってきた。
同社の資料によれば、オーナーとして開業し、出店場所を選ぶ通常プランだと初期費用に1210万円。ロイヤリティは月10万円、モデル月商は180万円、最大月商は300万円だという。
「カレーパングランプリ」2年連続金賞に!? ホリエモンも携わる「小麦の奴隷」のビジネスモデルとは?
つづいて、全国で107店舗のフランチャイズ展開するエンターテイメントパン屋「小麦の奴隷」を展開する「こむぎの」(北海道広尾郡大樹町)のブースを訪問した。代表取締役である橋本玄樹氏にインタビューをすることができた。
「小麦の奴隷」は、1号店を北海道広尾郡大樹町にオープン。大樹町は、インターステラテクノロジズというロケット開発会社のある、酪農と農業が中心の人口5000人程度のまちだ。
橋本氏は堀江貴文さんの主催するイノベーション大学に参加して、堀江さん発案のアイデアを受けて、大樹町に移住して1号店をオープンさせたという。
「小麦の奴隷」のコンセプトは「地方活性型エンタメパン屋」。地方都市にこれまでなかった商品を届けるとともに、「笑い」と「笑顔」を届けることを大切にしている。
橋本さん自身、鬼の扮装をしてまちに出てみたり、それが地方紙で取り上げられたり、店舗販売のみでなく車に商品を載せて事業所やお馴染みのお宅を訪問して、まちの人とコミュニケーションを取りながら販売していたという。
――北海道大樹町での人気はどうだったのでしょうか?
橋本氏 地道に店を開けていくことで馴染みのまちの人ができてきました。さらに、研究に研究を重ねた「ザックザクカレーパン」がカレーパングランプリをいただき、北海道の遠方からも食べに来る人がいるなど、まちの新名物のような感じになっています。
――「小麦の奴隷」のビジネスモデルを教えてください。
橋本氏 「小麦の奴隷」の特徴の一つに「こねないパン屋」というものがあります。国内の製造工場と提携していて、パン作りで、最も技術が必要で労働負荷の高い生地の混ぜ合わせ、捏ね上げて、生地に仕上げる工程を工場で済ませ、冷凍生地を全国の店舗に毎日卸しています。なので、パンづくりが初めての人でもパン屋さんをはじめられる手軽なところがウケているようです。
――このフランチャイズで成功する人の特徴を教えてください。
橋本氏 必要な資質は、やはり自分のいるまちを盛り上げたいという気持ちと行動力だと思います。
最高月商500万円を上げた沖縄県北谷店は、軽トラック3台を買い上げて事業所やお宅での移動販売に力を入れており、すごいバイタリティです。
また、エンタメの一環としてSNSでのマメな発信や、クラウドファンディングをつかったファンを巻き込んだ取り組みも重要です。
沖縄北谷店で月商500万円を上げる店舗があるなど驚くばかりだ。同社のウェブサイトによると、加盟金で300万円、研修費に50万円、店舗設営で500万円などかかるという。
地域の盛り上げに一役買ったり、大注目の商品を取り扱えたりするなど、地方展開に強いフランチャイズとして一つの魅力を感じる。
「独立開業であっても『経営者マインド』をもって、社会と会社を良くしてほしい」家事代行のベアーズ
続いては家事代行業を行う「ベアーズ」(東京都中央区)を取材した。
同社では「気持ちに寄り添うクリーニング」のモットーのもと、一般家庭クリーニングや商業店舗クリーニングの事業を行う。共働き世帯の増加や民泊施設の定期清掃案件の増加、高齢化による家事の代行の増加などの要因によって案件数を増やしているという。
さらに、ベアーズで特に力を入れているのは研修だという。本部研修からはじまり、基幹店研修、現場実地研修の段取りとなっており、開業に向けては70項目のテストに合格しなければならない。
また、開業後には別でアルバイトを2~3人雇い、本部から紹介される案件を業務委託形式でサービスを行うかたちとなるようだ。1案件あたりの平均単価は4万8000円ほど、初期費用は350万円で、固定ロイヤリティはなく売り上げの8%となっている。
担当者によると、
「紹介する案件は富裕層の方の住宅や、商業店舗クリーニングなど豊富にあります。ハウスクリーニングはこれからも伸びていく業界で直接感謝してもらえる仕事であるため、シニアの元管理職の方が現場の仕事がやりたくて入社してくることもあります」
と話していた。
この事業を始めるうえで成功する人の特長を聞いてみると、
「起業マインドのある経営者タイプの人は間違いなく成功する。仕事の上限を決めないで、社会のため、お客様のために頑張れる人は成長が早い」
と答えてくれた。
では、実際に事業を始めた人の声は――。ベアーズのパンフレットには、次のような声があがっている。
「はじめてハウスクリーニングを依頼した方、リピーターの方、企業様も安心して、サービス業としてお客様に喜んでいただけるよう日々努めていきたい」(男性・37歳)
「20代半ばまで飲食業界で働き、様々な仕事を経験する中で自分の店を持ちたいと思うようになりました。開業資金を貯めるために入ったハウスクリーニング業界で仕事にやりがいを感じ、起業しました。お客様の笑顔に出会え、多くの社員を抱え充実しています」(男性・46歳)
コミュニケーションを大切にすること、起業家マインドを持って取り組むこと、なによりも「自分らしさ」を活かすことが、独立開業・フランチャイズの成功の秘訣なのかもしれない。イベントを取材してみて、そんなふうに思った。