ガソリン高騰、1リットル200円突破? エコノミストが指摘「景気のけん引役、消費が落ち込む」「いや、中国経済悪化で年末にはガソリンが安くなる?」

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   ガソリン価格の高騰が止まらない。経済産業省が2023年8月16日に発表した全国平均小売価格は1リットル当たり182円弱。

   場所によっては190円、200円のところもある。世界的エネルギー危機、円安に加えて、政府が発動してきたガソリン卸への補助金が段階的に減らされているためだ。

   このまま「リッター200円時代」に突入するのか。エコノミストの分析によると、ガソリン・灯油の1世帯あたりの負担増は、昨年(2022年)に比べ1万6000円増になるという。いったい、日本はどうなるのか。

  • ガソリンを給油するのが怖くなる…(写真はイメージ)
    ガソリンを給油するのが怖くなる…(写真はイメージ)
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ガソリン補助金が9月末廃止、10月以降「200円」の大台に?

   報道等をまとめると、経済産業省石油情報センターは8月14日現在のレギュラーガソリン全国平均小売価格が、先週より1円60銭高い、1リットルあたり181円90銭に達したと発表した。

   値上がりは13週連続。181円台は、2008年8月に185円10銭の最高値をつけて以降15年ぶりで、その価格に近づいている。

   原油価格の値上がりや円安の進行に加え、ガソリン・灯油のなど燃料価格の負担軽減策として、元売り各社に国が給付している補助金が、6月から段階的に縮小されていることが影響した。政府はすでに、9月末に補助金制度を廃止する方針を決めている。今後、補助金を延長するかどうかが焦点になる。

   後藤茂之経済産業再生大臣は8月15日の記者会見で、「10月以降の対応は、国際的な燃料価格の動向を含めて今後対応を考えていきたい」と述べるにとどめている。

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ガソリン代はどこまで上がる?(写真はイメージ)

   こうした事態にエコノミストはどう見ているのか。

   ヤフーニュースコメント欄では、日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員の小山堅氏が、

「9月末の補助金制度の終了に向けて、この分だけでもガソリン価格は上昇に向かう。これをさらに押し上げる作用を持つのが、原油価格と円安である。原油価格は(米国産WTI原油1バレル当たり)一時期60ドル台まで下げていたが、今は80ドル台に戻してきた。今年の後半はさらに需給が引き締まり、国際市場でのドルベースでの原油価格が、さらに上昇していく可能性も指摘されるようになっている」

と説明。今後の見通しを、

「ここに円安が加われば、円ベースでの原油の輸入価格がかさ上げされ、それがガソリン価格を押し上げる重要な要因となる。10月以降の原油価格と円相場次第でガソリン価格は200円に接近、場合によっては大台を超えてくるような可能性も懸念されるところとなっている」

と予測した。

ガソリン・灯油の負担増、青森と東京では8倍もの大差

家計への負担増は、地域によって大きな差が出る(写真はイメージ)
家計への負担増は、地域によって大きな差が出る(写真はイメージ)

   10月以降、補助金なしになると、どうなるのか。

   1世帯あたりの年間家計負担は、ガソリン代だけで1万2000円増えると指摘するのは、第一生命経済研究所のシニアエグゼクティブエコノミスト新家義貴氏だ。

   新家氏はリポート「ガソリン・灯油価格上昇による家計負担増~年間1万6000円の負担増。地域によって大きな差~」(8月18日付)の中で、

「1リットルあたりのガソリン価格が200円、灯油価格が140円で1年間高止まりした場合、1世帯あたりの年間家計負担はガソリンで1万2000円、灯油で4000円増加する」

と試算している。

   これは、年間消費額の0.5%に相当する。実質賃金が減少し、個人消費も緩やかな伸びにとどまっている現在、決して小さいとはいえない額だ。

   しかも、深刻なのはガソリン、灯油ともに支出額の地域差が大きいことだ。ガソリン価格上昇の負担増額は、公共交通機関の利用が多い東京都区部など大都市圏で小さく、自家用車を用いることが多い地方圏で大きい。

(図表1)ガソリン価格上昇による年間負担増額、県庁所在地別(第一生命経済研究所の作成)
(図表1)ガソリン価格上昇による年間負担増額、県庁所在地別(第一生命経済研究所の作成)

   【図表1】は、県庁所在地のガソリン価格上昇による負担額増(対2022年比)を試算したグラフだ。

   これを見ると、最も負担増が小さい東京都区部では年間3700円程度に過ぎないのに対して、最も大きい山口市では約1万8000円に達するなど、5倍近い差がある。

   また、灯油価格は地域差がさらに大きい。冬場の気温が低く、暖房需要が多い東北・北海道などの地域の負担増が圧倒的に多いからだ。

   負担増額を県庁所在地別に見ると、最も支負担増が小さい神戸市では年間400円程度に過ぎないのに対して、最も大きい青森市では、なんと58倍の約2万3000円に達する。

(図表2)ガソリン・灯油価格上昇による年間負担増額、県庁所在地別(第一生命経済研究所の作成)
(図表2)ガソリン・灯油価格上昇による年間負担増額、県庁所在地別(第一生命経済研究所の作成)

   また、【図表2】は、ガソリンと灯油価格上昇による県庁所在地別の負担増を、合計したグラフだ。

   これを見ると、全国平均での年間負担増額は1万6000円だが、最も負担額の小さい東京都区部では約4300円にとどまる一方、最も大きい青森市では約3万5200円に達する。その差は8倍である。

   新家氏は、こう結んでいる。

「このように、ガソリン、灯油価格上昇により、地域によっては非常に大きな負担増がのしかかる。ガソリン、灯油価格は生活必需品に近い性格を持つため、使用量を大幅に減らすことは困難であり、値上がりが家計負担に直結する。
個人消費は景気の牽引役として期待されているが、ガソリン、灯油価格の上昇が家計の節約行動に繋がり、消費回復の頭を押さえることが懸念される」

長い目で見た「脱炭素社会」実現、補助金の延長は慎重に

どうなる日本経済?(写真はイメージ)
どうなる日本経済?(写真はイメージ)

   ただし、長い目で見た「脱炭素社会」実現のためには、ガソリン補助金の延長は慎重であるべきだ、と主張するのは野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏だ。

   木内氏はリポート「ガソリン価格は8月末に196円、9月末に199円と推定:それでもガソリン補助金延長の議論は慎重に」(8月17日付)のなかで、ガソリン価格(全国平均、レギュラー)は8月末に1リットル196円程度、9月末に199円程度になると予測する。

   このため、政府部内には、ガソリン価格が史上最高値を超える見通しとなったことを受け、9月末のガソリン補助金制度廃止の方針を見直し、延長を検討する動きも出ている。しかし、木内氏はこう指摘する。

「ガソリン補助金制度には3つの大きな問題点があり、長期化するほどその問題は大きくなる。第1は、市場価格を歪めてしまうこと、第2に、脱炭素社会実現の政策方針と矛盾してしまうこと、第3に、財政負担が膨らむことだ。
ガソリン補助金制度で既に4兆円規模の財政資金が投入されたとみられる。延長されれば財政負担はさらに膨らむ。その財源は税金や国債発行によって賄われており、結局は国民の負担なのである。本当の意味では、国民は助かっていない。
他方、現在の物価高対策は、電気・ガス料金の補助金制度も含めて、価格上昇によって特に打撃を受ける低所得層や零細企業に絞った、セーフティネットの施策へと転換していくことが望ましいのではないか。例えば、所得制限を付けた給付金制度などが考えられる」
中国経済が減速すれば原油価格が下落する?(写真はイメージ)
中国経済が減速すれば原油価格が下落する?(写真はイメージ)

   もう1つ、木内氏が指摘するのは、今後、国際経済がさらに悪化すれば、原油価格が下がるではないか、という展望だ。

「中国経済の悪化傾向が目立ってきており、これが今後原油価格の低下につながる可能性も考えられる。また、世界経済の減速懸念が、リスク回避での円買い、円高につながる可能性も考えられる。
そうなれば、原油価格下落と円高の双方の効果によって、年末にかけて国内ガソリン価格が一転して低下傾向を辿る可能性も十分に考えられる。
ガソリン補助金制度を現状のまま延長するか否かについては、効果と副作用を冷静に比較し、またこの先の国際経済・金融情勢、ガソリン価格の推移を見極めたうえで、慎重に検討を進めるべきだ」

(福田和郎)

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