ガソリン・灯油の負担増、青森と東京では8倍もの大差
10月以降、補助金なしになると、どうなるのか。
1世帯あたりの年間家計負担は、ガソリン代だけで1万2000円増えると指摘するのは、第一生命経済研究所のシニアエグゼクティブエコノミスト新家義貴氏だ。
新家氏はリポート「ガソリン・灯油価格上昇による家計負担増~年間1万6000円の負担増。地域によって大きな差~」(8月18日付)の中で、
「1リットルあたりのガソリン価格が200円、灯油価格が140円で1年間高止まりした場合、1世帯あたりの年間家計負担はガソリンで1万2000円、灯油で4000円増加する」
と試算している。
これは、年間消費額の0.5%に相当する。実質賃金が減少し、個人消費も緩やかな伸びにとどまっている現在、決して小さいとはいえない額だ。
しかも、深刻なのはガソリン、灯油ともに支出額の地域差が大きいことだ。ガソリン価格上昇の負担増額は、公共交通機関の利用が多い東京都区部など大都市圏で小さく、自家用車を用いることが多い地方圏で大きい。
【図表1】は、県庁所在地のガソリン価格上昇による負担額増(対2022年比)を試算したグラフだ。
これを見ると、最も負担増が小さい東京都区部では年間3700円程度に過ぎないのに対して、最も大きい山口市では約1万8000円に達するなど、5倍近い差がある。
また、灯油価格は地域差がさらに大きい。冬場の気温が低く、暖房需要が多い東北・北海道などの地域の負担増が圧倒的に多いからだ。
負担増額を県庁所在地別に見ると、最も支負担増が小さい神戸市では年間400円程度に過ぎないのに対して、最も大きい青森市では、なんと58倍の約2万3000円に達する。
また、【図表2】は、ガソリンと灯油価格上昇による県庁所在地別の負担増を、合計したグラフだ。
これを見ると、全国平均での年間負担増額は1万6000円だが、最も負担額の小さい東京都区部では約4300円にとどまる一方、最も大きい青森市では約3万5200円に達する。その差は8倍である。
新家氏は、こう結んでいる。
「このように、ガソリン、灯油価格上昇により、地域によっては非常に大きな負担増がのしかかる。ガソリン、灯油価格は生活必需品に近い性格を持つため、使用量を大幅に減らすことは困難であり、値上がりが家計負担に直結する。
個人消費は景気の牽引役として期待されているが、ガソリン、灯油価格の上昇が家計の節約行動に繋がり、消費回復の頭を押さえることが懸念される」