観光客の増加による、住民のバス乗車、ごみの問題などに悩み 有効な対策がなく...
ただ、問題は大量のインバウンドをスムーズに受け入れられるかどうかだ。
コロナ禍を機に旅行需要は激減して、都心から地方まで、全国のホテルや旅館の倒産が相次いだ。同時に宿泊業に従事していた人たちは他業種に流出。現時点でも「人手が足りず、空き部屋があっても、お客さんを入れられない」という宿泊施設は少なくない。
「今後は宿泊料金が上がって、日本人の旅行者やビジネスマンに痛手になるだろう」(経済関係者)との懸念も出ている。
さらに観光地を不安にさせているのが、観光客の増加で住民の生活や、自然環境などに悪影響が及ぶ「オーバーツーリズム」の問題だ。
京都や鎌倉など全国の主要観光地では、コロナ禍以前から、住民がバスに乗れなかったり、あちこちに捨てられるごみに悩まされたりするなど、さまざまなトラブルが生じていた。
コロナ禍に見舞われている間は、「今のうちにオーバーツーリズムに対する対策をとらないといけない」という声が上がっていたものの、「行政も含め、実際には何の対策も進んでいない。今後どうなるか不安でしかない」(京都の観光関係者)などの声も上がる。
有効な対策もないまま、再び大量のインバウンドを迎え入れようとしているのが観光地の実情といえる。
宿泊施設にロボットを導入して接客の一部を担わせたり、AI(人工頭脳)を使った混雑解消の工夫を行ったりするなどの動きも出ているが、こうした取り組みがさらに拡大しない限り、混乱が生じる可能性は高いだろう。(ジャーナリスト 済田経夫)