労働人口の減少が進む中、女性の活用が言われて久しい。
では、企業活動の中で、女性は実際にはどの程度の割合を占めており、どの程度の社会的な地位にあるのだろうか。厚生労働省が2023年7月31日に公表した「令和4年(2022年)度雇用均等基本調査」から、女性の雇用状況と管理職の状況を見てみよう。
正社員に占める女性の割合26.9%...前回から0.5ポイント低下
同調査は、男女の均等な取り扱いや仕事と家庭の両立などに関する雇用管理の実態把握を目的に行われている。2022年年10月1日現在の状況について、常用労働者10人以上の企業3096社、常用労働者5人以上の事業所3339事業所から回答を得た。
正社員に占める女性の割合は26.9%と、前回(2021年度)の27.4%より0.5ポイント低下している。
これを職種別に女性の比率で見ると、総合職では21.3%。準総合職、専門職など基幹的な業務や総合的な判断を行う業務に属しているが、転居を伴う転勤がない、または一定地域内や一定職種内でのみ異動がある限定総合職では33.3%。一般職では33.4%。その他では、20.4%となっている。
女性だけで見ると、正社員に占める割合は、一般職が44.8%と最も高く、次いで総合職36.4%、限定総合職13.1%の順だ。なお、男性では、総合職が49.7%と半数近くを占めていることから、女性の総合職がまだ男性並みの比率となっていないことがわかる。
女性の正社員比率を業種別に見ると、比率が圧倒的に高いのは医療、福祉で正社員の70.3%が女性だ。生活関連サービス、娯楽では50.0%、意外にも金融、保険が第3位で42.1%となっている。(表1)
管理職に占める女性の割合...係長以上14.7%、課長以上12.7%
では、女性はどの程度、管理職に就いているのか。
企業規模10人以上の企業全体の中で、女性の管理職(役員を含む)がいる割合は、係長以上では2021年度の61.1%から0.6ポイント低下して60.5%に、課長以上では同52.1%から1.1ポイント低下して52.1%となっている。
同様に、企業規模10人以上の企業全体で、役職別に女性の管理職のいる割合を見ると、係長は22.9%、課長は22.3%、部長は12.0%、役員は32.4%となっている。
近年、2015年度以降の傾向を見ると、係長、課長、部長は微増傾向にあるが、役員は2018年度以降、減少傾向にある。(グラフ1)
次いで、管理職に占める女性の割合を見ると、企業規模10人以上の企業では、係長以上(役員を含む)の女性の管理職の割合は2021年度の14.5%から0.2ポイント上昇して14.7%、課長以上(同)では2021年度の12.3%から0.4ポイント上昇して12.7%となっている。
同様に、企業規模10人以上の企業で、それぞれの役職に占める女性の割合では、係長18.7%、課長11.6%、部長8.0%、役員21.1%なっている。
近年、2015年度以降の傾向を見ると、係長、課長は増加傾向が続いているものの、部長、役員に占める女性の割合は横ばいが続いている。(グラフ2)
企業全体での女性管理職がいる割合、管理職に占める女性管理職の割合とも同様だが、係長、課長、部長と昇格する過程で、相当する管理職の人数は減少していく。管理職に占める女性管理職の割合では、係長では約5人に1人、課長では10人に1人が女性だが、部長では女性は10人に1人以下の比率に低下する。
一方で、役員全体に対する女性の割合は、企業全体での女性管理職がいる割合、管理職に占める女性管理職の割合とも同様に、役員数は全体の従業員、管理職数に比べ、非常に少ない。したがって、女性が1人でもいれば、女性の割合は高いものになる。女性役員のいる割合が、企業全体では32.4%、管理職に占める割合では21.1%と高いのはこのためだ。
業種別で女性管理職の割合が突出して高いのは、医療と介護
業種別の役職別女性管理職の割合を見ると、医療、介護は係長、課長、部長、役員のいずれでも1位で、特に役員の女性の割合が49.1%と約半数を占めているのは、特筆すべき点だろう。
係長では2位が金融、保険、3位が生活関連サービス、娯楽。だが、課長では逆転して、2位が生活関連サービス、娯楽、3位が金融、保険となっている。部長では2位が生活関連サービス、娯楽、3位に教育、学修支援がとなる。
さらに、役員では2位は生活関連サービス、娯楽だが、3位に宿泊、飲食サービスが急浮上する。生活関連サービス、娯楽と宿泊、飲食サービスでは、役員の3割以上が女性となっている。これに対して、係長では36.3%で2位だった金融、保険は、役員では9.2%にまで女性の比率は低下している。(表2)
医療、介護や生活関連サービス、娯楽、あるいは宿泊、飲食サービスなどのように、女性の細やかな心遣いが活かせる業種では、女性管理職の比率も高く、女性の活用が進んでいるといえそうだ。だが、ひるがえってそれ以外の業種については、少なくとも女性の活用が進んでいるとはいえそうにもないのが実態だろう。