文筆家が最も困る「ネタ切れ」...ひらめかない時、していることは?【尾藤克之のオススメ】

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   『虹の岬の喫茶店』『おいしくて泣くとき』など数々のベストセラーを世に送り出してきた小説家・森沢明夫さんの初の実用書。

   今回紹介したい本書は、小説投稿サイト「ノベルアップ+」に寄せられた、小説の「書き方」に関する質問に、一問一答形式で回答した「小説を書くための本」です。

『プロだけが知っている 小説の書き方』(森沢明夫著)飛鳥新社

「不幸な出来事=取材のチャンス」

   「じつは小説のネタはあなたの周りにいくらでもある」と、森沢さんは言います。

「ぼくは小説のネタに困ったことはありません。ネタは周囲にいくらでも転がっているからです。ほとんどの小説は、登場するキャラクターの心の上がり下がりを描くことで表現される成長物語です。ということは、心の上がり下がりを経験したことのある人に話を聞くことができれば、それはもう小説のネタになる可能性があるわけです」(森沢さん)
「人生で一度も心の上がり下がりを経験したことがない人なんて、そうそういませんよね?例えば、自分の近しい人に『ねえ、人生でいちばん苦しかったときのことを教えて』と頼んで、それを詳しく教えてもらい、さらに『その逆境をどうやって乗り越えたの?』と聞けば、一気に物語の結論までもらえちゃうわけです」(同)

   主人公が挫折をして苦しみ、それを乗り越えて成長する。その一連の流れがわかれば、もう短編のネタとして使える、ということです。

「ネタは、そのまま使うのではなく、自分なりの脚色を加えましょう。それができたらプロットはほぼ完成と言っていいでしょう。長編にしたければ、まったくつながりのない二人から話を聞いてネタミックスしてみるのもありです。どこにでもありそうなネタを組み合わせれば、オリジナリティのある長編のプロットができ上がるのです」(森沢さん)
「小説家にとっては、『不幸な出来事=取材のチャンス』だということを覚えておいて下さい。ぼくは、自分の身に不幸が降りかかると、取材をスタートさせています。自分は、その不幸な出来事をどう感じ、どう行動しどうやって立ち直っていくのか。また、そのとき周囲の人たちは、何を言いどんな言動をしたか観察しておくのです」(同)

「ネタ切れ」防止のために...プロがしていることは?

   ニュースなどの記事の場合には、不特定多数の人に読まれることを想定して文章を書かなければいけません。そこで、テーマは読者の関心に合わせていたほうがいいでしょう。一般的なオープン情報から、読者の関心を推測することは難しくありません。

   まずはSNSの書き込みを参考にします。たとえば、20代の趣味について文章を書きたいとします。検索エンジンで調べれば、おおむねの傾向がわかります。ブログやSNSを見れば、年代ごとの嗜好がわかると思います。

   SNSをたどれば、詳細な情報を把握することができます。「今日、行きたかった○○寺に来ています」「○○線の始発で終点まで行って来ました。名物のお蕎麦を食べたら終電で帰ります」「○○マラソンシニアの部に出場。はじめての完走です」など。これが、恋人、夫婦、近所のサークル、同級生など、プライベート色が強いほど確信にかわるものです。

   仮に、あなたがいま、50代向けに記事を書こうとしていたとしましょう。「50代でも楽しめる筋トレ」「50代でも20代のように若々しく見える筋トレとは」。どちらの記事を読みたくなるといえば、後者だと思います。読者が読みたい、または反応しやすい言葉を散りばめることで、興味を惹きつけることができます。

   文章を書くうえで気をつけなければいけないのが「ネタ切れ」です。そこで、ネタ切れ防止のためにおすすめしたいのが「複数視点を持つこと」です。たとえば、50代向けの旅行記事を発信したいとします。旅行記だと、数記事分ぐらいにしかなりません。

   しかし、旅行記というカテゴリーを、郷土料理、名産、ホテル、お酒、景気、風景、政治、歴史、景観、著名人、遺跡、人などというように細分化していったらどうでしょうか。視点が多いほど切り口は多様になります。一つの取材場所でもあっても、媒体やターゲットにあわせて、複数の記事を書き分けられるようになります。

最後まで読ませるストーリー構成とは?

   本書は書き手の悩みが元になっているので、とにかくリアルで、超実用的です。「小説家としての心得」なんて曖昧な情報は、いっさい出てきません、本当に役立つ「具体的」「実用的」な情報だけがまとめられています。

   「最後まで読ませるストーリー構成とは?」「魅力的なキャラクターの共通点とは?」「読者の脳内に映像が浮かぶ、文章表現のコツとは?」などなど。思わず納得してしまう内容です。小説を書くための技術がたくさん学べるはずです。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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