為替介入を急がない、「悪い円安論」がやわらいだ4つの理由
昨年の為替介入時に比べ、現在は経済状況が好転し、円安への懸念がやわらいでいるため、為替介入を急ぐ公算は小さい、と指摘するのは三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。
市川氏はリポート「一時145円台を回復したドル円について為替介入の可能性を探る」(8月14日付)のなかで、2022年9月の為替介入時と現在(2023年7月)のマクロ経済の違いを示す【図表】を紹介している。
これを見ると、2022年9月の日経平均株価が2万5937円なのに対し、現在の日経平均株価は3万3172円と、2022年9月より7000円以上株高になっている。
訪日外国人も現在は2022年9月の10倍以上だ。輸入物価指数(前年同月比)も現在はマイナス14%と下がっているが、2022年9月当時はプラス48%と、急激な物価高に苦しんでいた【再び図表】。
つまり、2022年9月時点は「悪い円安」論が日本中を席巻していたわけだ。こうしたことから、市川氏はこう結んでいる。
「例えば、現時点では、国内の株高基調、インバウンド(訪日外国人)需要の回復、貿易赤字の縮小、輸入物価の落ち着きが確認されており【図表】、円安に対する当局の懸念は、2022年9月当時と比べ、いくらか和らいでいると思われます」
「そのため、ドル円の『水準』が144円台や145円台であっても、ドル高・円安の進行『ペース』が、行き過ぎと判断されない限り、当局が為替介入を急ぐ公算は小さいとみています」
(福田和郎)