従業員の転退職で倒産、2023年1~7月で前年を上回る34件...2年連続増 企業はこれまで以上に「本業で稼げるかどうか」問われる

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   転職の過熱化や人材の流動性が高くなることによって、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接または間接的に起因した「従業員退職型倒産」が気がかりだ。

   帝国データバンク(東京都港区)は2023年8月8日に「全国企業倒産集計2023年7月報 別紙号外リポート」を発表した。

   調査によると23年1~7月の従業員退職型倒産の件数は、前年同期の28件を上回る34件発生しているという。これは、2年連続の増加。さらに業種別の割合では、「建設業」(17件)、「サービス業」(9件)、「小売業」(3件)、「運輸・通信業」(2件)だった。

  • 人材の流動性が高まっているようだ(写真はイメージです)
    人材の流動性が高まっているようだ(写真はイメージです)
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「従業員退職型」倒産...1~7月累計、最多は「建設業」 「有資格者の離職にともない、外注費の高騰や受注の減少」

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(帝国データバンクの作成)

   帝国データバンクによると、従業員や経営幹部などの退職・離職が直接または間接的に起因した「従業員退職型」倒産の件数は2023年1月から7月に34件あった。これは、前年同期の28件を6件上回り、過去最多であった2019年の37件に迫る水準に達した。

   かたや、「人手不足」が要因となった倒産は23年1月から7月の124件で、過去最多ペースで推移しているという。こうしたなか、とくに「従業員退職型」倒産が気がかりだ。

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(帝国データバンクの作成)

   「従業員退職型」倒産について、1~7月累計を業種別にみると、「建設業」が17件だった。同社では

「現場の職人をはじめ、建築士や施工管理者など有資格者の離職にともない、外注費の高騰や受注の減少を招き、事業継続を断念するケースが多くみられた。土木や内装、電気配線工事など、分野を問わず発生していることから、建設業界全体で従業員の転退職による倒産が頻発している」

   と指摘している。

   同社によるとこのほか、「サービス業」の9件では、システムエンジニアの退職で受注を抑制せざるを得ずに倒産した「受注開発ソフトウェア業」や、整備士の退職によって事業体制が困難になった「自動車整備業」の倒産が目立っているという。さらに「運輸・通信業」の2件では、自社ドライバーの流出による倒産もあったとしている。

加速する賃上げ機運 従業員の給与面や、労働環境への不満解消を

   「従業員退職型」倒産を食い止めるには、「賃上げ」はひとつ、キーワードとなりそうだ。2023年は、値上げラッシュによる物価高騰をはじめ、資源高による水道光熱費などの値上げによって、企業の賃上げ機運は高まっている。

   それと前後して、大手企業では基本給の底上げ(ベア)への取り組みが進んでいる。このほか、7月に行われた厚生労働省の審議会では、今年度の最低賃金について、全国平均で41円(時給換算)引き上げ、1002円をする目安も定められた。

   今回の調査結果と、こうした賃上げ機運の動向を踏まえ、帝国データバンクでは以下のように指摘している。

「こうした『官製賃上げ』による最低賃金の上昇に加え、ポストコロナ下での人材獲得競争による労務費増加に対し、企業はこれまで以上に『本業で稼げるかどうか』が問われる。
業績の改善が伴わないまま、人材確保のための賃上げに踏み切れない経営体力に乏しい中小企業において、従業員の給与面や労働環境への不満を解消できずに人材が流出し、事業継続が困難になり倒産に至るケースが増加する可能性がある」
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