東証が要請した「PBR1倍」割れの改善に向けて 企業の内部留保を減らし、自社株買いなど株主還元が進むか?

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

23年1~6月発表の「中期経営計画」で、PBRに言及する企業が激増 株主還元の行き過ぎには懸念も

   実際に東証の要請を受け、企業側も動き出している。

   調査会社のまとめでは、2023年1~6月上旬に発表された中期経営計画でPBRに言及する上場企業は55社と、22年通年(12社)の4.6倍と、激増している。

   具体的には、東海東京調査センターによると、上場企業の自社株買い決議は23年1月~7月13日までに計5兆7561億円に達した。

   日経新聞の集計では、24年3月期の上場企業の配当計画は計15兆2200億円と、過去最大だった23年3月期実績を1000億円ほど上回るという(23年6月5日朝刊)。

   ただし、株主還元も行き過ぎを懸念する向きもある。

   米国では株主の圧力が強く、有名企業でも、自社株買いや高配当を迫られ、マクドナルドのように債務超過の会社も珍しくない。もちろん、安定して黒字を稼ぎ出し続けているから問題にされない。

   日本では米国とは違い、債務超過まで株主還元する企業はないが、海外ファンドの「物言う株主」からは、ゼネコンなどの低PBRの会社が、株主総会で株主還元の強化を迫られるケースが続出している。

   いずれにせよ、株主還元だけでは一時しのぎでしかない。

   ようは、ため込んだ利益を次の成長に向けて投資し、収益力を高めていくこと。東証の「脱・PBR1倍割れ」の要請が、企業の背中を押し、株式市場の期待を高め、株高を演出した間違いないところだ。

   だが、これを持続させることができるか否か、それは企業自身の今後の取り組みにかかっている。(ジャーナリスト 白井俊郎)

姉妹サイト