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住友化学株、2年7か月ぶり安値...第1四半期赤字を嫌気 「構造改革」アクセル踏み込み、巻き返しへ

   住友化学の株価が2023年8月3日の東京株式市場で一時、前日終値比31円90銭(7.3%)安の403円50銭まで値下がりし、約2年7か月ぶりの安値となった。

   前日2日の取引終了後に発表した2023年4~6月期連結決算(国際会計基準)が331億円の最終赤字を計上するなど業績悪化ぶりが顕著で、投資家の売りを誘った。

連結対象の中堅医薬・住友ファーマ、最終損益388億円の赤字 主力薬の特許切れ、グループ再編が影響

   4~6月期連結決算の内容を確認しておこう。売上高にあたる売上収益は前年同期比27.3%減の5631億円、臨時要因を除いた経常的な収益力を示す「コア営業損益」は535億円の赤字(前年同期は641億円の黒字)、営業損益は717億円の赤字(同662億円の黒字)、最終損益は331億円の赤字(同699億円の黒字)と赤字転落し、その赤字幅も大幅だ。

   最終赤字額は4~6月期として過去最大だった。証券市場では「想定以上に厳しい着地となり、ネガティブ」(SMBC日興証券)などとする反応が相次いだ。

   すでに7月31日に医薬品事業を担う連結対象の上場子会社で、中堅医薬の住友ファーマが4~6月期連結決算を発表している。それによると、最終損益が388億円の赤字(前年同期は311億円の黒字)。

   親会社の住友化学も苦しい決算になることは予想されていたが、住友ファーマが扱う医薬品以外も全体的に苦戦した。

   住友ファーマについていえば、主力薬「ラツーダ」(非定型抗精神病薬)の米国での独占販売終了(特許切れ)などの影響で、売上収益が前年同期に比べほぼ半減したことが響いた。また、米国のグループ会社再編に伴い、退職金などの構造改革費用がかさんだことも利益を押し下げた。

石油化学品は需要減、農薬は過剰な流通在庫、飼料添加物は市況の下落で...苦戦が続く

   住友化学については、主力事業の石油化学品が中心のエッセンシャルケミカルズ事業で、コア営業損益が210億円の赤字(前年同期は100億円の黒字)と大幅に業績が悪化した。住友化学は「世界的な景気減退に伴う石油化学品の需要減少や合繊原料の事業撤退等により出荷が減少した」と説明している。

   なかでも、サウジアラビア国営石油会社「サウジアラムコ」との共同出資会社の販売が低迷した。合成樹脂などは市況が低水準で推移したことも響いた。

   さらに、健康・農業関連事業では、農薬が高水準な流通在庫の影響で、中南米、インドを中心に出荷が減少。飼料添加物は市況が下落し、収益が悪化した。この結果、コア営業損益が70億円の赤字(前年同期は219億円の黒字)に沈んだ。

   住友化学は4~6月期連結決算発表に合わせて、アナリストなどに構造改革のアクセルを踏み込む方針を表明した。

   従来、2023年3月期~25年3月期までの3年間で約250億円の「体質転換・合理化」を進めるとしてきたが、追加的なコスト削減を実施するといい、中間決算時に全体像を説明する方針。ただ、株価下落を食い止める効果は限定的だった。(ジャーナリスト 済田経夫)