プロセスを振り返る習慣とは
次に、2つ目の「プロセスを振り返る習慣」について。
これは、一つの仕事の準備を始めてから結果に至るまでの仕事ぶりを振り返る習慣です。仕事の進行過程の要所要所の状態について、良否とその要因を言語化し、経過を整理する作業が必要です。
失敗した時にはなぜそうなったのか。スタートまで立ち返って振り返るのです。また、成功した場合ならどのような準備や判断が良かったのか、振り返ります。
これは、他人の経験を取り入れる時も同様です。他者の仕事のプロセスの良い点を学び、吸収し、自分の今後の行動に活かすのです。「学ぶ」の語源ともいわれる、「真似ぶ」行動といえるでしょう。
自分が注目するロールモデルに共通する行動は何かを、日頃から意識して観察し、言語化します。また、優れた他者からのフィードバックやアドバイスはできるだけ取り入れ、自分の行動に活かすようにします。
さらに、本連載のCASE32(「今の仕事経験で成長できる気がしません」と訴える部下...どう育てる?)で触れた「意図的で効果的な行動の試み」を当初の計画(P)に取り入れることも有効です。この「質のよい経験」を後で振り返り(C)、よりよい改善行動や再発防止行動を定め直し、実行すること(A)で、さらに仕事の精度が向上します。
こうして部下の振り返る力が高まり、効果的な振り返りを自ら習慣化できれば、本人の成長につながるのです。
とはいえ、あらゆる仕事について、こうした緻密な計画と振り返りを行うのは困難です。部下にとって経験値につながる仕事に焦点をあてて、試みるとよいでしょう。キャリアの節目にあたる仕事をしっかり計画させ、振り返らせる支援から始めましょう。
それでは、部下の振り返りの支援には、さらにどのような留意点があるか。<「人事評価を聞く前に、振り返りしろなんて!モラハラでしょ?!」と訴えるベテラン部下...どう諭す?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE34後編)】(前川孝雄)>で解説していきましょう。
※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。
【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版)、『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks)、『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所)等30冊以上。最新刊は『部下全員が活躍する上司力 5つのステップ』(FeelWorks、2023年3月)。