最終契約の遅れの背景に...日産の取締役人事を巡る混乱、アンペア出資の条件交渉など
これまでの経緯にも触れておきたい。日産は経営危機に陥った1999年、ルノーに資本支援を求め、ルノーが約6000億円を投じて日産株の約37%を取得し、カルロス・ゴーン元会長を最高執行責任者として日産に送り込んだ。
その後、ルノーが日産の43%、日産がルノーの15%を、それぞれ持ち合うかたちになって現在に至る。ただ、経営危機から復活した日産が、近年は売上高、販売台数でルノーを上回っており、特にフランスの法律による制限で、日産が持つルノー株には議決権がないことから、日産には「不平等条約」との不満が強かった。
J-CAST 会社ウォッチも、「日産とルノー、資本関係見直し...日産が求める『不平等解消』へ、協議進んだ「2つの要因」と「今後の交渉ポイント」(2022年10月28日付、)、「日産とルノー、いびつな『不平等』ようやく解消...仏政府も支持 熾烈なEV化競争の渦中、勝ち残り容易でなく」(2023年2月14日付)などで報じてきたように、両社は2022年から交渉を加速。23年2月に大筋の合意に達していた。
2月の合意から約5か月、最終契約が想定よりも遅れたのは、日産の取締役人事を巡る混乱やアンペア出資を巡る条件交渉などが背景にある。
日産は5月12日にルノー出身のアシュワニ・グプタ最高執行責任者(COO)の退任を発表(6月27日の株主総会で退任)した。だが、これに絡み、内田氏がグプタ氏を「監視している」などとする内部告発文書が発覚した。
ことの背景には、日産の知的財産をルノーがどれだけ使えるようにするかという問題があったらしい。日産経営陣の中で、ルノー側への知的財産の「流出」を懸念する声が根強く、最終合意が遅れた一因とされる。
アンペアへの出資についても、日産内には極力抑えたいとの消極論が強く、合意に時間を要した。結局、2月の合意で「最大15%」という数字が最終的に「最大6億ユーロ」に変更され、決着した。
アンペアの時価総額は60~70億ユーロ(1兆円)規模になるともいわれ、出資比率は2月想定の15%より下がる可能性がある。