マック、ガスト、スシロー...「地域価格設定」広がる デフレ経済からの脱却につながるか?

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   日本マクドナルドは2023年7月半ばに、東京や大阪、名古屋などの都市部にある「都心店」など特定の店舗に限定して10~90円の値上げを実施した。賃料や人件費が高騰し、運営コストの負担が特に重くなっている店舗だけを値上げの対象にしたのが特徴だ。

   地域や店ごとに異なった価格設定をする動きは、すかいらーくホールディングス(HD)でも22年夏から導入するなど、外食業界で広がりつつある。

  • 「地域価格設定」が広がっている(写真はイメージ)
    「地域価格設定」が広がっている(写真はイメージ)
  • 「地域価格設定」が広がっている(写真はイメージ)

ビッグマック価格...「通常店」450円、「準都心店」470円、「都心店」500円

   マクドナルドが今回値上げしたのは、全国3000店舗のうちの184店舗で、全体の約6%に当たる。

   ここ数年、人手不足や円安などによる原材料費の高騰などから運営コストが上昇したため、同社は2022年から23年初旬にかけて、計3回にわたり値上げを実施した。しかし、それでは補い切れないとして、今回の値上げとなった。

   同社はこれまで、空港や遊園地、サービスエリアなどにある「特殊立地点」や、ごく一部の店を「都心店」と位置づけ、通常の店舗より高い価格をつけてきた。

   今回はこの「都心店」を拡大したうえで、さらに首都圏の繁華街などにある店を「準都心店」に設定。全国一律で値上げするのではなく、コスト負担が重い、こうした都市部の店だけで価格を引き上げた。

   マクドナルドの代表的な商品である「ビッグマック」の価格を比較すると、「通常店」では450円なのに対し、「準都心店」では470円、「都心店」では500円と、1割の差にある。

全国一律価格が「当たり前」だったが、この1~2年で状況変わる

   マクドナルドに限らず、外食のチェーンはこれまで、全国一律の価格を設定するのが当たり前だった。

   どんな地域でも同じ価格だということが、消費者にとっては安心材料でもあったが、この1~2年で状況が変わってきている。

   すかいらーくHDは2022年7月から、グループ傘下のファミリーレストラン「ガスト」と中華レストラン「バーミヤン」で地域別に異なる価格設定の導入を始めた。

   ガストは現在、「超都心」と「都市部」、「地方都市」と三つのカテゴリーに分けて、それぞれ異なった価格をつけている。看板商品である「チーズINハンバーグ」では、「地方都市」は769円だが、「都市部」は824円、「超都心」は879円で、最大で110円の差をつけている。

   バーミヤンは東京都や神奈川県などの「関東圏」と「その他の地域」の二つの区分を作り、異なる価格を設定している。

   大手回転ずしチェーンでも同じような動きが出ており、スシローでは2022年10月から、「都市型」と「準都市型」「郊外型」と三つの区分を作り、価格設定を変えている。

背景に、原材料費や人件費の高騰...一律の値上げは、消費者離れの恐れから躊躇

   こうした地域や店舗別の価格設定が増えている背景には、原材料費や光熱費、人件費などが急速に高騰していることがある。

   どの店も経営が厳しくなっており、価格転嫁したいところだが、「単に価格を上げれば、消費者離れにつながるという恐れがある。来店客数が多い都心店などなら受け入れられる可能性が大きいと判断しているのだろう」(業界関係者)。

   そもそも都心部の店舗の方が人件費などは高く、郊外や地方の店舗などより高い価格をつけるのは当然といえる。ところが、「特にチェーン店は長年、『全国一律』でやってきたので、簡単に価格差をつけられなかった」(同)という事情がある。

   今回の物価高騰の中、大手が次々と地域別価格を取り入れ始め、大きな来客減につながらないと今後わかっていけば、同様の動きが加速する可能性は高い。「デフレ経済からの脱却の一つの動き」(大手紙経済部デスク)といえそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)

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