ビジネスパーソンにとって30代、40代は、上司もいて、部下もいて、あるいは周囲の活躍も気になって...という悩み多き世代ではないでしょうか。
当コラム「その仕事の悩み、こんなふうに考えてみよう。」では、キャリアや生活にまつわる悩みに、組織や人材開発、コーチングに詳しい「ひろ子ママ」が、アドバイスやエールをお送りしていきます。
◆きょうのお悩み
きょうはGさんが、こんな悩みを抱えていらっしゃいました。「部下との評価面談をしていて、評価に不満をかかえている部下がいるんですよね。その中でもAさんは普段の仕事っぷりはミスも多く決して優秀とは言えなく......『役職が上がった同期と比べても劣っていないはずなのに、なんで自分は役職が上がんないんだ』と不満を抱えているんです。自分の能力に対して自信たっぷりなので、どう伝えたら分かってくれるか悩みます」
人は自分の実力よりも、自分を高く評価する
Aさんのような自信たっぷりの部下を持つ上司は「ダニングクルーガー効果」について知っておきましょう。
ダニングクルーガー効果とは、本来の実力よりも自分を高く評価する「認知バイアス」という心理現象のことです。現実を歪めて自分に都合よく物事を認識してしまうため、自己評価を実際よりも肯定的に過大評価してしまいます。
実際に学生に対して行なった自己評価についての実験では、優秀な学生ほど自己評価が低く、優秀とは言えない学生ほど自己評価が高いという現象が起きました。ダニングクルーガー効果の状態下にある人には下記のような特徴があると言われています。
・自分の能力が不足していることに気づかない
・自分を過大評価してしまう
・他者をきちんと評価できなくなる
・能力について実際に訓練した後であれば、自分の能力を正しく認識できる
このような特徴から自分と他者との評価のズレが生じやすいため、「自信たっぷりな人」ほど評価に対して不満を抱えてしまうのです。
仕事の評価は自己評価ではなく「他者からの評価」なのですが、指摘されてもなかなか気づいてくれません。Gさんはまず、Aさんがこのような思いを抱えているのではないかと考えてみましょう。
注意やアドバイスをしてもミスが改善されない
「Aさんは普段からケアレスミスが多いのですが、注意やアドバイスをしてもなかなかミスが直らないんですよね」(Gさん)
さきほどのダニングクルーガー効果による問題にあったように「自分の能力が不足していることに気づかない」傾向があります。
そのため、GさんがAさんに日頃から注意やアドバイスをしていても改善されないのはAさんが「聞いてくれない」わけではなく、「ミスしていることに対しても自覚がない」からという可能性があります。
つまり、無理やり力ずくで間違いを正そうとしては逆効果なので、改善する方法を考えていきましょう。
ダニングクルーガー効果を回避する方法
ダニングクルーガー効果下にある人の特徴に「能力について実際に訓練した後であれば、自分の能力を正しく認識できる」とあるように、ダニングクルーガー効果を回避することはできます。
GさんもAさんに訓練の機会を提供することで、正しく自己評価ができる状態にできるということです。
そこで訓練の方法を紹介します。
・フィードバックを受けられる環境作り
自己評価に依存しないように、知見を広げる必要があります。そこで、他者との会話の機会やフィードバックを受けることで自分の認識の誤りや、他者との考えの違いを知ることができます。
・他人との違いを見つける
Aさんの場合、同期との役職の差に対して不満を抱えていました。その差に納得できないのであれば、同期の仕事の様子を観察してもらいましょう。
「自分とは異なる部分」「同期の評価されている点」が見えてくるはずです。Gさんは一緒に振り返りを行うことでAさんの納得度が得られるでしょう。
人は「自分のことを気にかけてくれている」と感じることで不満も和らぐものです。GさんはAさんを「分かってくれない」と煙たがらず積極的に関わってみましょう。(ひろ子ママ)