茶道にある「死者への想い」
茶の湯は戦国時代に大きく発展し、今日の姿になったといわれている。戦国の世に、武将は僧侶とともに茶の湯と専門家を戦場に連れていった。一条さんは次のように言う。
「わが社では、茶道の精神を体現できる『お茶のある人』になるため、多くの社員が稽古に励んでいます。茶道の稽古は、おもてなしの修行、礼儀作法の修行、人間の修行です。茶室という狭い空間で主客の息づかいまで聞こえるような距離でお互いが接し合うことで相手が何を求めているかを自然に察知できる感性が身についてきます」(一条さん)
「茶道とは、日本人の『おもてなし』における核心なのです。そこには『一期一会』という究極の人間関係が浮かび上がってきます。最初に呼んだのは、利休の弟子である山上宗二です。『一期一会』は、利休が生み出した『和敬清寂』の精神とともに、日本が世界に誇るべきハートフル・フィロソフィーであると言えるでしょう」(同)
茶も花も、戦場で命を落とした死者たちの魂を慰め、生き残った者たちの荒んだ心を癒やしたのだ。今でも、仏壇に茶と花を手向けるのはその名残りだといわれている。