「中国政府は、本格的な景気下支え策に未だ動いていない」
中国では経済を牽引してきた不動産バブルが崩壊、不動産価格が下落して景気の先折れ感が広がっているが、中国政府は対策に本腰を入れているのだろうか。
中国政府の対策に危機感を抱くのが、野村アセットマネジメントのシニア・ストラテジスト石黒英之氏だ。
石黒氏はリポート「じわりと忍び寄る中国リスクをどうみるか?」(8月9日付)のなかで、世界のGDP(国内総生産)の合計に占める、米国と中国の割合の推移のグラフ【図表1】を紹介。中国が世界経済に与える影響の大きさを示した。
これを見ると、2001年には約32%あった米国の存在感が、2022年には約25%に下落。一方、中国は2001年には約4%だった存在感が、2022年には2割近い約18%にも上昇している。「中国がクシャミをすれば、世界が風邪をひく」状態に近くなった。それだけに、石黒氏はこう指摘する。
「政府が景気対策をとると上昇し、引き締めに動けば低下する傾向のある中国のクレジットインパルス(GDPに対する新規貸出の伸びを示す指数)は足元で、マイナスで推移しており、中国政府は本格的な景気下支え策に未だ動いていないとみられます。
2001年以降、世界における中国の存在感は高まっており、世界経済に与える影響は無視できない規模となっています【図表1】。当面は中国政府による効果的な景気対策がいつ打ち出されるかが焦点となりそうです。
一方、世界一の経済大国である米国の景気の堅調さが続いており、中国の低迷を米国がどれだけカバーできるかもポイントです。中国経済の先行き懸念から8月8日の欧米の株式相場が下落するなど、中国リスクへの警戒はくすぶりますが、景気対策余地の大きさから、現時点では中国リスクの深刻化は回避できるのではないでしょうか」
つまり、中国政府はまだ何も景気対策に動いていないが、景気対策の余地が大きいので、もし動けばリスク回避できるだろうというわけだが、期待して大丈夫か?