英国王室を離脱したヘンリー王子が4年ぶりに来日。メーガン妃を伴わない「単独行動」に、注目が集まっています!
ヘンリー王子と言えば、自叙伝やネットフリックスのドキュメンタリー番組などで、チャールズ国王や兄のウイリアム皇太子ら王室メンバーとの確執を赤裸々に語る「暴露ビジネス」が話題となっていましたが、今回はチャリティ目的とあって、少々趣が違う様子。
それもそのはず、笑顔を振りまく王子の背景には、「慈善活動家」への転身作戦があると、海外メディアが指摘しています。
今回の来日は、一部でささやかれている「王室復帰」への第一歩となるのでしょうか?
ヘンリー王子、メーガン妃と離れてチャリティ活動をアピール 人気回復となるか
じつは、ヘンリー王子の4年ぶりの来日について、海外ではあまり話題になっていませんでした。むしろ、シンガポールで開催されるチャリティーポロ大会への参加がメーンのアジアツアーの一環として、「ついでに日本に寄るよ」といった程度の扱いに過ぎませんでした。
ところが、ふたを開けてみたら、びっくり! ヘンリー王子が羽田空港に到着したニュースを、各国メディアがこぞって速報扱いで報じているのです。
ヘンリー王子の服装や日本のファンへのコメントなどを、日本のテレビ映像を紹介するかたちで伝えるなか、皮肉にも注目の的は、メーガン妃の存在でした。
Prince Harry arrives in Japan without Meghan
(ヘンリー王子がメーガン妃を伴わずに日本に到着した:英タブロイド紙サン)
Prince Harry spotted in Japan, but no Meghan beside him
(ヘンリー王子を日本で発見、メーガン妃は横にいない:米デイリーエクスプレス)
来日したヘンリー王子と同様に、姿をみせないメーガン妃に注目が集まっていることに驚きますが、2023年8月4日に42歳の誕生日を迎えたばかりの同妃はアメリカの自宅に残り、アーチー王子とリリベット王女の子育てに専念していると報じられています。
ヘンリー王子夫妻については、仲睦まじく映画鑑賞やイベントに参加する姿がメディアを賑わせる一方で、「ヘンリー王子が辣腕弁護士に離婚相談をした」といった不仲説も後を絶ちません。
最近では、英紙ミラーなどが、王子が兄のウイリアム皇太子に電話をして「英国にもどり国王に仕えることを考えている」と申し出たと報じて話題を呼びました。
ヘンリー王子が本当に公務復帰を希望しているかどうかは定かではありませんが、今回の「単独来日」で、ヘンリー王子の「路線変更」が明らかになったと、複数のメディアが報じています。
Prince Harry to exploit solo tour to Asia to turn PR tide for Sussex brand
(ヘンリー王子、アジアへの単独ツアーで、自身のブランド戦略を方向転換:英タブロイド紙)
Prince Hasrry's eastern tour creates important opportunity for positive PR
(ヘンリー王子の東方ツアーは前向きなPR作戦の重要な機会だ:米ニューズウイーク誌)
王室を離脱した後、アメリカ西海岸の高級住宅地で優雅な超セレブ生活を送りながら、王室ネタをふんだんに盛り込んだ「暴露本」や、ネットフリックスのドキュメンタリー、テレビでのインタビューなど、いわゆる「暴露ビジネス」で存在感を示していたヘンリー王子。
最近は、自身やメーガン妃のプライバシー侵害をめぐる英メディアとの確執や、デイビッド・ベッカム夫妻らセレブ仲間との「不仲ぶり」、そして相次ぐ「暴露ビジネス」の契約打ち切りなど、ネガティブな報道が先行していました。
そんなヘンリー王子にとって、チャリティ活動を積極的に展開する「慈善活動家」の顔をアピールできる今回のアジアツアーは、またとない「イメチェン」のチャンス! この後、ドイツで開催されるスポーツのチャリティーイベントに参加することが発表されるなど、メーガン妃との共同ビジネスに距離を置き、「慈善活動」に邁進する姿を前面に出してきました。
また、ヘンリー王子は、王室メンバー時代から、スポーツを通じた障がい者やエイズ患者らの支援活動を熱心に展開していましたし、ポロは英国王室にゆかりのあるスポーツです。王室時代のヘンリー王子を思い出す人も多いことでしょう。
ニューズウイーク誌は、メーガン妃を伴わない「単独来日」は、「ポジティブな印象」を与え、とりわけ王室ファンからの人気回復に向けた計算づくの戦略だと指摘。今回の来日がヘンリー王子にとって重要な分岐点になるという専門家のコメントを紹介しています。
たしかに、羽田空港に降り立って、カジュアルな姿でファンに笑顔を振りまくヘンリー王子の姿は、メーガン妃と一緒にいる時と比べて素朴で誠実な印象を与えますし、何よりも「お金」のにおいが漂ってきません。
各国メディアが、日本人に囲まれる素朴なヘンリー王子の姿を報じれば報じるほど、「ヘンリー王子が恵まれない人のために活動している」という「ポジティブな印象」が世界中に広がる、という戦略。なるほど、今回ばかりは我々日本人が重要な役割を果たすことになるのかもしれません。
王室復帰が遠のいた? ヘンリー王子称号「はく奪」ニュースの意外な舞台裏
ヘンリー王子の来日が話題になるなか、なんと、英国王室のウエブサイトが更新されて、ヘンリー王子の称号がはく奪された、というニュースが飛び込んできました。
Prince Harry's 'His Royal Highness' title removed from royal family website
(ヘンリー王子の「ロイヤルハイネス」という称号がロイヤルファミリーのウエブサイトから消されていた:英インディペンデント紙)
「His Royal Highness(殿下)」はロイヤルファミリーであることを表す称号です。2020年にヘンリー王子が英国王室を離脱した際、離脱後の称号がどうなるのか大きな注目を集めましたが、英国王室は「今後王子は公務を行うロイヤルファミリーではなくなるため『HRH(殿下)』の称号は使わない」と発表。王子もそれに合意していました。
ヘンリー王子の称号はとっくにはく奪されているはずなのに、なぜこのタイミングで「速報」が流れるのか不思議に思っていたら、意外な舞台裏が見えてきました。
英国王室のコメントによると、故エリザベス女王の逝去やチャールズ国王の就任など、世代交代やビッグイベントが相次ぎ、公式ウエブサイトに膨大な修正作業が発生。英国王室の公式ウエブサイトは、なんと5000ページを超える情報量を誇っているため、修正作業も大変な負担になっていたとか。
つまり、「王室復帰」説がささやかれるタイミングでホームページ上から「殿下」の称号が消えたのは、王室の策略やメッセージではなく、単にウエブサイトのメンテナンス作業が追いつかなかっただけ、という、ちょっとなさけない理由だったようです。
「称号はく奪事件」の真意のほどはわかりませんが、「メンテナンスミス」でさえ、各国メディアが速報で流す注目度の高さは、起死回生を図るヘンリー王子にとって「諸刃の剣」であることは間違いなさそう。
今回の来日がポジティブに転ぶかネガティブに転ぶかは、メディアがどう伝えるかに左右されそうです。
それでは、「今週のニュースな英語」は、「turn tide」(潮目を変える)を使った表現です。以前も紹介したことがありますが、今回は、最近のニュースで使われた「生の事例」をご紹介しましょう。
G-7 can turn the tide on digital trade
(G7は、デジタル貿易の潮目を変えることができる)
Tide turns finally for Japanese stocks
(とうとう、日本株の潮目が変わってきた)
Kiev's drones turn tide of conflict of Black Sea
(キエフのドローンが、黒海紛争の潮目を変える)
この記事を書いていたら、ヘンリー王子が東京でのスポーツ振興イベントに「ノーギャラ」で参加したというニュースが飛び込んできました。「善良」なイメージがさらにプラスです。
正直、メーガン妃の不在がここまでプラスに働くことに驚きますが、これまでのところ、「PR戦略」の滑り出しは上々の様子。「王室復帰」への道のりは、案外近いかもしれません。(井津川倫子)