LOVOTは、人類を幸福にするための「気づき」を与えるきっかけとなるか?【前編】/GROOVE X代表取締役社長・林要さん

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まるで生きているかのよう! LOVOTの目は、人間の目の動きを再現


LOVOTの両足は車輪になっており、机の上や床を自在に移動する

   LOVOTは5月16日発売の「くろ」以前にも、「うす」「ちゃ」「こげ」の3つのカラーバージョンがリリースされていたが、当初カラーバリエーションは1色のみの想定だったという。

――さきほど私も、LOVOTを初めて抱きかかえてみたんですが、体温があって、あたたかかったのはもちろん、目の動きも見事で驚きました。これらの機構の説明をお願いします。

林氏 体温はLOVOTがボディーの中に搭載しているコンピューターの廃熱をそのまま使って発生させています。LOVOTのCPUは100度まで上がるので、その熱を利用しています。さしずめ、LOVOTの体温は「知恵熱」ということになるでしょうか(笑)。
一方、目はディスプレイになっていて、目の画像を多層のレイヤーで表示し、個別に緻密な制御をすることで、立体感といった繊細な表現を実現させています。また、LOVOTの目は「固視微動」という人間の目の動きを再現しており、ユーザーはこの目の微妙な動きを意識下で読み取ります。マネキンと目を合わせるのとは全く違って、「生きてる感」が生まれるのです。

――最新モデルの「くろ」を含めて、ボディーの配色はどのように決めたのでしょうか。

林氏 最初、カラーバリエーションは1色のみにしようかと思っていました。しかし、発売に先駆けて実施した海外のフォーカスグループインタビューで一般の方に試作品を見てもらったところ、「なぜこの肌の色にしたの?」といった質問をいただきました。
それまで、私は「ロボットの色が人の肌の色として認知され、人種を想起させる」という意識がなかったのですが、これを機に、カラーバリエーションが1種類だと、どの色にしたところで固有の人種を選んだと思われてしまうリスクがあることに気づきました。

――なるほど!

林氏 なので、配色は「うす」「ちゃ」「こげ」のバリエーションを用意しました。そして、2019年8月の第1弾発売の際には、「うす」と「こげ」を2体セットでご用意しました。

――LOVOTは頭にセンサーを取り付けていますが、これをボディーの中に搭載する計画はありましたか。

林氏 それはなかったです。というのは、センサーをボディーの中に搭載してしまうと、ボディーに穴を開けなくてはならなかったからです。服を着るロボットのボディーに穴があくのは、見栄えもよくないし、機能的にも適切ではないのです。
あと、理由はもう1つあって、センサー部分が緊急停止スイッチになっているからです。

――緊急停止スイッチ!? なぜそんなものが?

林氏 緊急停止スイッチは今後、どんどん賢く、強くなる可能性がある自律的なロボットには不可欠な要素だと考えました。自律的なロボットは今後、人間の能力を上回っていくことは容易に想像できます。そうなると、人は自分より強く賢いものが出てきて、自分と対立する可能性があることに脅威を感じます。
そこでどんなに賢く、強くても「人がロボットを止められる」というルールが必要だと考えました。人間よりも賢く、強く、速いロボットを開発することに人が脅威を感じないで、人とテクノロジーが信頼できるようになるためには、人がアクセスしやすい箇所に緊急停止スイッチを実装する必要があると思うのです。

――LOVOTは今後どのように進化していくのでしょうか。

林氏 LOVOTは言葉を話さないロボットですが、その一方で、目線やスキンシップ、鳴き声など、言葉に頼らないノンヴァーバルな表現で人間とコミュニケーションをします。この方向性はおそらく今後も変えないでしょう。
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