実質賃金が上昇に転じるのは、2025年半ば以降か?
それにしても、期待はずれの結果だったのはどういうわけか。
野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏は、リポート「春闘の妥結と比べて見劣りする実際の賃上げ率:実質賃金の安定的上昇は2025年半ば以降か:長期インフレ期待の安定回復は日銀の責務(6月毎月勤労統計)」(8月8日付)のなかで、連合などの発表と厚生労働省の毎月勤労統計との間に「落差」が生じた要因として、次の3つの理由を挙げた。
(1)厚生労働省の調査がカバーするのは「従業員5人以上」の零細企業が多く、零細企業の賃上げ率は主要企業より低かった。
(2)平均賃金上昇率と概ね一致するのは、定期昇給分を含む賃上げ率全体ではなくベースアップ部分だ。ベアと近い動きを示すのは残業代やボーナスなどを除く、より変動の小さい所定内賃金である。それは、6月はプラス1.4%に過ぎなかった。
(3)そして、ベアを公表する企業が必ずしも多くなく、誤差が生じやすい。
それはともかく、実質賃銀が上昇に転じるのはいつなのだろうか。木内氏はこう予想する。
「ベアが幅を持って1%台半ばから2%程度とした場合、消費者物価上昇率がその水準まで低下するにはなお時間がかかる。さらに、物価上昇率の低下を反映して、来年の春闘のベアは比較的高水準ながらも、1%台半ばなど、今年の水準を下回ると予想される。物価上昇率が緩やかに低下していっても、賃金上昇率も低下していくため、なかなか両者の逆転は起きない。
物価上昇率が安定的にベアを下回り、実質賃金が上昇に転じるのは、消費者物価上昇率が0%台半ば程度まで低下する局面であり、それは2025年半ば以降になると予想される」
あと2年先だというのだ。