「時間外労働の上限規制」月45時間上限でみると、建築業の一般労働者6割が上限超過に
一方で、年間平均の時間外労働を見ると、2022年度は管理監督者が前年度比4.7%減の305時間なのに対して、非管理監督者が同3.6%減の351時間と、やはり非管理監督者が管理監督者を上回っている。
建設業界の動向としては、年間平均の時間外労働は減少傾向にあるものの、全産業の常用雇用者の平均167時間と比べると、建設業の非管理監督者は倍以上の時間外労働となっている。(グラフ2)
繰り返しになるが、2024年4月からの「時間外労働の上限規制」では、年間360時間以内が上限となる。
だが、非管理監督者では、2022年度の年間時間外労働が360時間以内だったのは52%で、360時間を超えている上限超過者が48%と半数近い状態だ。
特に、労働基準法の特例である年間720時間を超える時間外労働の割合が、年々減少しているとはいえ、8%もいることは大きな問題だ。(グラフ3)
これに対して、管理監督者では、年間時間外労働が360時間以内だったのは62%と、非管理監督者を10%上回っている。年間720時間を超える時間外労働の割合も5%と非管理監督者を下回っている。(グラフ4)
しかし、これは年間の時間外労働の360時間、特例の720時間を基準とした割合だ。「時間外労働の上限規制」では年間360時間以外に、月45時間も上限としており、これを基準とすると、2022年度の非管理監督者の上限超過者の割合は59.1%と6割近い割合に跳ね上がる。
さらに、労働基準法では特例として、第36条で法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える時間外労働及び休日勤務などを命じる場合、労組などと書面による協定(いわゆる36協定)により、(1)年間720時間以内(2)2~6か月それぞれの平均が80時間以内(3)1か月100時間未満(4)月45時間超は年6回までを上限とした時間外労働が認められている。
だが、年間720時間以内という基準以外を加えると、2022年度の非管理監督者の特例上限の超過者の割合は22.7%と2割を超えている。
こうした状況から建設業における2024年問題への対応は、遅々として進んでいないのが実態だろう。建設業では長い間、人手不足が続いているため、時間外労働が当然の状況になっている。
ただ、「時間外労働の上限規制」をクリアしようとすれば、工期が延びる、あるいは工費が増加する可能性も高い。建設業における2024年問題は多くの問題を内包している。