「家事が趣味の女性と結婚したい」。こんな希望を強く持つ婚活中だという男性公務員の投稿が炎上騒ぎになっている。
男性に家事をする気はなく、自分からお願いして嫌々やってもらうより、最初から「家事大好き」の女性を探したほうが面倒はない、というわけだ。
女性たちから「家政婦を雇いなさい!」「母親を求めているの?」と嵐のような怒りが巻き起こっている。男性の要望はイマドキ許されない時代錯誤の内容か。専門家に聞いた。
「趣味」という表現は、家事の大変さを理解せず、気楽なものと捉えている
<イマドキ「家事が趣味の女性と結婚したい」ってアリ? 男性公務員の投稿が大炎上!「ママと結婚しなさい」「家政婦を雇ったら?」...専門家に聞いた(1)>および<イマドキ「家事が趣味の女性と結婚したい」ってアリ? 男性公務員の投稿が大炎上!「ママと結婚しなさい」「家政婦を雇ったら?」...専門家に聞いた(2)>の続きです。
――前回からの続きとなりますが、「家事が趣味でよいなら、やりたくない時に家事をしなくてもいいのですね」という反発が多数寄せられました。
川上敬太郎さん「まさにそのとおりです。趣味は自分がしたい時にだけすればよいものです。スポーツでもゲームでもプラモデル作りでも、どんな趣味でも365日休まずやらなければならないとしたら、果たして趣味として楽しむことを持続できるものか疑問です。
投稿者さんが回答者たちから強い反発を受けるのは、『趣味』という表現を使っていることで、家事の大変さを理解せず、気楽なものと捉えているような印象を与えるからではないでしょうか」
――なかには、「あなたに男性としての魅力があるなら、家事をいとわずに尽くす女性もいるでしょう。しかし、公務員であること以外に素のままのあなたに、お金があるとか、美男子であるとか、魅力がありますか」と痛烈に批判する意見もありました。
川上敬太郎さん「本来は、家事をするか否かと、結婚相手の魅力度合いとは無関係だと思います。家事は生活するうえで必要なので、家族の誰かが必ずしなければならないものに過ぎません。ただ、365日しなければならないものだけに、面倒で、大変で、多くの人は自分から進んでやりたいわけではありません。
しかし、投稿者さんが心から尽くしたくなるほど特別に魅力的な人物であれば、やりたくない家事でも快くやってくれる妻が現れるのではないか、という主旨のアドバイスなのだと思います。
ただし、回答者たちの真意は、普通はそんな特別な魅力など持ち合わせていないものなのだから、自分勝手なことを言うべきではないと戒めたいのではないでしょうか」
逆に「趣味家事、特技家事」の男性を求めて、仕事に専念したい女性もいるはず
――川上さんなら、ズバリ、「趣味家事、特技家事」の女性と結婚したいと望む男性にどうアドバイスをしますか。どうすれば、彼は理想の女性と結婚できるでしょうか。
川上敬太郎さん「世の中のどこかには、きっと投稿者さんが理想とするような365日『趣味家事、特技家事』を貫ける女性がいるのではないでしょうか。ただ、仮にそんな女性と巡り合えたとしても、その女性が投稿者さんを結婚相手として選ぶかどうかはわかりません。
また、男性である投稿者さんが365日『趣味家事、特技家事』を貫ける女性を求めているように、『趣味家事、特技家事』の男性を求めて仕事に専念したい女性もいると思います。もし投稿者さんが、『そんな男性は世の中にいないだろう』と思うとしたら、その印象がそのまま、いま回答者から見えている投稿者さんご自身の姿です。
かつて、男性が働き、女性は家庭を守るという図式が一般化していたのは、男性は働くことが好きで、女性は家庭を守ることが好きだからではありません。世の中の価値観に合わせていただけです。
現実は、家庭を守るよりも働きたいと考えている女性がたくさんいます。一方で、家庭を守るほうがいいと考える男性もいます。女性だから『趣味家事、特技家事』の人がきっと見つかるだろうと考えているとしたら、現実と大きなギャップがあり、理想のお相手を見つけるのに想像以上に苦労されるのではないでしょうか」
理想の結婚相手は、「趣味家事、特技家事」でなくても構わないと思わせてくれる人?
――そういえば、回答者の中に、「私だって、家事が大好きな夫が欲しい」「夫に家事を任せてバリバリ働きたい」という女性が何人かいました。
川上敬太郎さん「ちょっと気になったのは、仮に『趣味家事、特技家事』の女性と出会えて結婚できたとしても、結婚後、妻の志向が変わって家事が嫌いになったり、働きたいから家事を分担して欲しいと言われたりしたら、投稿者さんはどうされるのでしょうか。
恒久的に家事をしたいと思い続けることが結婚の条件だからと、離婚するのでしょうか。お子さんが生まれたものの、難病を抱えて多くの治療費がかかるために、夫婦が共にフルタイムで働かなければならなくなる可能性だってあります。それでも、妻に家事を分担しようと言われたからと離婚するのでしょうか。
人は経験と共に成長します。結婚はゴールではなく、配偶者とともに始める新しい人生のスタートです。そう考えると、結婚とは人生をともに歩む中で結婚後の変化を受け入れる決断でもあります。
妻が『趣味家事、特技家事』であるか否かは、その入口の条件でしかないことを踏まえ、一生添い遂げたいと思うお相手と巡り合った時に、『趣味家事、特技家事』という条件がどれほど重要になるのかを、今一度確認されてはどうかと思います。
ひょっとすると、投稿者さんにとっての理想の結婚相手とは、投稿者さんに『趣味家事、特技家事』でなくてもかまわないと思わせてくれる方なのかもしれません」
自分が家事を一手に引き受けてでも結婚したい、と思える人は現れるか?
――そのとおりですよね。男性がこれほど非難を浴びてしまったのは、「趣味家事、特技家事の女性と結婚したい」という、たったひと言でした。
川上敬太郎さん「犯罪にかかわるようなことでない限り、どんな人と結婚したいかという願望は個人の自由であり、誰からも許しを得る必要などないものだと思います。投稿者さんが多くの非難を浴びているのは、その考え方が多くの人に嫌悪感を与えているに過ぎません。
回答者の方々が、嫌悪感を覚える根本にあるのは、投稿者さんが家事の大変さをまったく理解していないのに、安易に『趣味家事、特技家事』の女性を求めているように見えること。それと、そんな結婚相手が見つかると考えている背景に、『女性だから』という暗黙の決めつけを感じることにあるように思います」
――男性は結婚相手が見つかるでしょうか。
川上敬太郎さん「結婚相手にどんな条件を求めるかは、人それぞれ自由です。ただ、一般的に、シビアな条件を求めれば求めるほど、結婚相手に巡り合える可能性は狭くなります。だからといって、結婚は決してしなければならないものではありません。条件に合う人と巡り合えなければ、結婚しないという選択肢もあって当然です。
ただ、結婚とは、夫婦が助け合いながら人生を共に紡いでいく誓いです。それは、結婚前の想定が変わっても受け入れることが前提という面があります。たとえば、配偶者が事故に遭って障害を負ってしまったり、仕事が上手くいかなくなって経済的に苦しくなったり、トラブルに巻き込まれて思いもよらぬ借金を背負ってしまうようなこともありえます。それでも、助け合いながら、人生を共に歩んでいく相手が配偶者です。
投稿者さんが『家事が趣味の女性と結婚したい』という条件に固執しすぎることで、自分が家事を一手に引き受けてでも結婚したいと思えるような女性と出会う機会を逃すことがなければと思います」
(福田和郎)