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イマドキ「家事が趣味の女性と結婚したい」ってアリ? 男性公務員の投稿が大炎上!「ママと結婚しなさい」「家政婦を雇ったら?」...専門家に聞いた(2)

   「家事が趣味の女性と結婚したい」。こんな希望を強く持つ婚活中だという男性公務員の投稿が炎上騒ぎになっている。

   男性に家事をする気はなく、自分からお願いして嫌々やってもらうより、最初から「家事大好き」の女性を探したほうが面倒はない、というわけだ。

   女性たちから「家政婦を雇いなさい!」「母親を求めているの?」と嵐のような怒りが巻き起こっている。男性の要望はイマドキ許されない時代錯誤の内容か。専門家に聞いた。

  • 家事が大好きな女性(写真はイメージ)
    家事が大好きな女性(写真はイメージ)
  • 家事が大好きな女性(写真はイメージ)

「コツコツ愛情を込めて家事をすると、自分への愛着につながり、人生の質が向上する」

   <イマドキ「家事が趣味の女性と結婚したい」ってアリ? 男性公務員の投稿が大炎上!「ママと結婚しなさい」「家政婦を雇ったら?」...専門家に聞いた(1)>の続きです。

――論争の背景には、家事をめぐる女性と男性の考え方の違いや、働く女性にとっての家事負担の問題がありますが、川上さんが研究顧問を務める働く本音を調べる『しゅふJOB総研』で、今回のテーマに即した調査を行なったことがありますか。

川上敬太郎さん「仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層に、『あなたは、家事が好きですか』と尋ねたところ、『好き』と『嫌い』がともに28.5%、『好きでも嫌いでもない』が43.0%でした。好き嫌いが見事に半々でした。

家事の『手抜き』ってどう思う?

また、全体の中で『とても好き』と回答した人は4.5%でした。投稿者さんがイメージされている『家事が趣味の女性』は、ひょっとすると、この4.5%の中にいるのかもしれません。比率としてはかなり少なそうではありますが、世の中に1人もいない、というわけでもなさそうです。
フリーコメントを見ると、『専業主婦なので、手抜きをすると後ろめたい気持ちになるし、夫からも手抜きと言われてしまう』と、多くの女性が家事にプレッシャーを感じています。
ただ、たった1人ですが、『家事の手抜きを批判はしませんが、マイペースにコツコツ愛情を込めて為すことは、自分への愛着につながり、人生の質が向上し、満足度は高くなると思っております』とコメントした人がいました。こういう方にとって、家事は『趣味以上』なのかもしれませんね」

「家事が趣味の女性」から、「奴隷」が連想されてしまう

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家事の大変さを理解しているの?(写真はイメージ)

――まさしく、「特技」のレベルかもしれませんね。ところで、男性に対する批判で最も多いのは、「それほど家事を重視するのなら家政婦を雇うべきだ」、あるいは「専業主婦の希望者を求めるべきだ」という意見です。

川上敬太郎さん「家事をしてくれる女性、という役割だけを求めているのであれば家政婦さんを雇えばよいと思いますが、結婚して夫婦になるという希望まで満たせるわけではありません。
一方、『専業主婦の希望者を求めるべきだ』という意見については、投稿内容を見ると、そもそも投稿者さんは専業主婦歓迎で活動しているものの、よいと思う女性は専業主婦になりたがらないということのようです」

――たしかに男性は、追加のカキコミで、結婚相手は専業主婦でもよいと述べています。しかし、実際に公務員である人から「イマドキ、公務員の給料では共働きでないと子どもを養うことができない。あなたは共働きになった場合、家事を担う気があるのか」という批判が寄せられています。

川上敬太郎さん「公務員でも役職などによって給与水準は異なりますし、専業主婦の妻や子どもを養えるかどうかは、希望する生活水準によっても変わってきます。
それだけに、一概に批判や指摘内容の是非を判断できないと思いますが、回答者たちの真意は、投稿者さんが現実を見ずに自分勝手なことを言っていると思い、考え方を改めさせたいということなのではないか、と思います」

――なかには「セックス付き家政婦を求めているのか」「奴隷を求めているようなものではないか」と激しく批判する意見もありました。

川上敬太郎さん「かなり感情的な批判だと感じますが、『家事が趣味の女性と結婚したい』という投稿者さんの願望から連想される妻の姿が、そんなイメージと重なってしまうということなのだと思います」

「みそ汁の匂いで目覚めるというイメージは、温かい家庭を象徴するワンシーン」

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夫に料理を作ってほしい女性もいる(写真はイメージ)

――男性の追加のカキコミが、さらなる大バッシングを招いた側面もあります。専業主婦だった自分の母親を引き合いに出したり、婚活で得意料理を聞いても答えられなかったパート女性に対して、「私は父親ではないので、そういう方を養うつもりはない」と書いたりしたため、「あなたはお母さんを求めている」「母親世代の方と結婚してはいかが」という痛烈な批判につながっていました。

川上敬太郎さん「かつての日本では専業主婦世帯の方が多かったことを踏まえて、皮肉を込めて『母親世代と結婚してはいかが』といった回答をされているのではないかと思います。
ただ、実際に母親世代に、本当に心から家事が趣味と言えるほど好きな女性が多かったのかどうかは別です。あくまでもその時代の価値観に合わせていただけであり、必ずしも家事が好きで趣味だから専業主婦になっていたとは限らないのではないでしょうか」

――そういえば、回答者の意見の中に、30年前に「みそ汁の匂いで目覚めたい」と言った男性がおり、「今、こういうタイプは、結婚は無理」と思ったという話が出てきます。
しかし、昭和の独身男性の中には、先輩の家に泊まり、朝、奥さんが作るみそ汁をすすって、「ああ、早く結婚したい!」としみじみ思った人が多かったことは事実ですが、こういうことはもう許されないのでしょうか?

川上敬太郎さん「みそ汁の匂いで目覚めるというイメージは、温かい家庭を象徴するワンシーンなのだと思います。それもまた、あくまで個々の志向であり、そんな願望を持つ自由もあれば、それを否定する自由もあるのではないでしょうか。
朝、トントンと心地よい包丁の音と、みそ汁の香りの中で目覚めるというシーンに憧れる気持ちは私もよくわかります。ただ、いま私(川上敬太郎さん)は兼業主夫なので、自分がみそ汁を作る側です。でも、作る側から見えるそんな景色もまた、いいものだなと思っています(笑)」

「家事とは365日休みなく発生し続ける家庭内仕事」

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家事労働の報酬は?(写真はイメージ)

――なるほど。川上さんは現在、料理を作る側でしたね。ところで、今回の論争で最大の焦点となったのが、男性が使った「家事が趣味の女性」という言葉です。
追加のカキコミでは、「スポーツや読書好きの女性に憧れるように、趣味家事、特技家事の女性に憧れてどこがおかしい」という趣旨のことを書いていますが、こういう考え方をどう思いますか。

川上敬太郎さん「自分の母親を理想と考えることを含め、どんな女性と結婚したいと考えるかは人それぞれです。投稿者さんが結婚したい理想の女性像を言葉にした時、『趣味家事、特技家事』という表現になったということなのだと思います」

――しかしながら、「『家事が趣味』という女性は、現実にはあり得ない」という意見が圧倒的に多かったです。「家事は多岐にわたり、料理が好きでも掃除は嫌い」など、好き嫌いが分かれている。スポーツでいえば、マラソンも柔道もダンスも好きだし、できる人はいない、というわけです。
しかも、「名もない家事がある」「たとえ家事が好きでも、結婚すれば、『家の仕事』になる」という指摘が多くありました。

川上敬太郎さん「『家事が趣味』というのは言葉の綾(あや)であり、家事が苦にならず好きだ、といった意味合いで捉えたほうがよい表現なのではないかと思います。
ただ、それは家事のことを理解し、その大変さをわかっている人が使う分には特段問題はない言葉なのだと思います。ですが、家事のことを理解していない人が使うと、『わかってない感』が前面に出て、『嫌悪感』に直結しそうです。
家事とは365日休みなく発生し続ける家庭内仕事です。ビジネスのように100メートル全力でダッシュした後、小休止があり、またダッシュするという大変さとは根本的に異なります。たとえるなら、延々と続くゴールのないマラソンです。
たしかに、実際に家事が趣味だという人もいますが、それは料理したり、洗濯したり、掃除したり、といった一連の家事を楽しめる、という意味だと思います。しかし、人がずっと生活していれば、体がだるい時や、やる気が出ない時もあります。病気にもなりますし、夏は暑く、冬は凍えても家事は365日し続けなければなりません」

   このあとも、川上さんのアドバイスが白熱します――。<イマドキ「家事が趣味の女性と結婚したい」ってアリ? 男性公務員の投稿が大炎上!「ママと結婚しなさい」「家政婦を雇ったら?」...専門家に聞いた(3)>にまだまだ続きます。

(福田和郎)