日銀、金融緩和政策を「軌道修正」 住宅ローン金利への影響は?...専門家が解説(中山登志朗)

それでも日本経済に大きく影響する住宅ローン金利の急激な上昇だけは、避けなければならない...

   今回の「植田ショック」によって、今後住宅ローン固定金利が上昇する可能性が極めて高くなりました。

   したがって、住宅の購入および買い替えを検討していて、住宅ローンを利用しようと考えているユーザーは、購入に関する決断を前倒して進める必要があります。

   足元では東京都心の新築マンションは平均価格が1億円を突破しており、坪単価が850万円~1000万円を超える物件も珍しくありません。

   また、都心の築浅タワーマンション最上階近くのプレミアム住戸は、150平米程度で5~7億円以上の売買価格で流通していますから、価格だけ見ればバブル(もしくはそれ以上)と表現しても差し支えない水準に達しています。

   これらはまさに、黒田日銀が残した異次元緩和の「落とし子」なのですが、金融緩和の終わりの始まりともいえる今回の軌道修正によって、住宅市場は今後縮小を余儀なくされる可能性が出てきたのです。

   さかのぼること30年余り前の90年バブルは、当時の大蔵省が通達した総量規制(=不動産融資の伸び率が貸出全体伸び率を下回るように求めた規制)によって、突如として崩壊。その後遺症の大きさによって失われた20年(30年とも)という長いデフレ期から抜け出すことができなかった、という苦い経験を日本経済はしています。

   住宅ローン金利の急激な上昇は、確実に住宅市場を縮小させることを考慮して、いつの日か必ず来る本格的な金融引き締め(その端緒が今回の「植田ショック」かもしれません)については、景気後退の引き金を引かないようカンフル剤を的確に投入しつつ、緻密かつ慎重な制度設計で臨んでもらわなければなりません。(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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