金利上昇、コストプッシュ型の住宅価格上昇、住宅購入優遇策の縮小の3つが重なり...
黒田前総裁が2022年末に実施した長期金利の誘導目標0.25%から0.5%への引き上げは、事実上の金融引き締めと市場から受け止められていました。
それにより、運用変更後数か月に渡って目標上限の0.5%、もしくは0.5%をやや上回る水準で長期金利が推移したことをご記憶の方も多いと思います。
その間、長期金利(長期プライムレート)に連動している住宅ローンの固定金利も、各金融機関から相次いで引き上げが公表されました。たとえば、住宅ローン35年固定金利(代表的な金融機関の優遇適用後新規貸出金利の平均)は1.6%台から1.8%台へ、さらには1.9%台へと上昇しました。
その後はやや低下したものの、今回の「植田ショック」によって、長期金利は現状の0.5%台から誘導目標の上限である1.0%に達するまでは指し値オペが実施されませんから(日銀は他にもさまざまな国債買い入れ手段を持っています)、上限に向かって徐々に上昇圧力が高まることが考えられます。
当然のことながら、この0.5ポイント程度のバッファが1.0%に向かって上昇していけば、住宅ローンの35年固定金利も現状の1.9%台から2%台半ばの水準へと、徐々に引き上げられていくことはほぼ確実です。
折悪しく、住宅ローン減税の仕様も2024年以降の制度変更が決まっています。
住宅性能の違いによって設定されている年末住宅ローン元本の上限が各々500~1000万円引き下げられますから、13年間(中古住宅は10年)の控除総額は50~100万円弱縮小することになります。
さらに、ウクライナ侵攻の長期化によるサプライチェーンのひっ迫も継続しており、資材およびエネルギー価格の高騰によるコストプッシュ型の住宅価格の上昇も、依然として避けられない状況にあります。
一般に金利の上昇は、住宅価格の頭打ちおよび下落を招くのですが、現状のようにコストプッシュが背景にあると、新築住宅の価格は下げるに下げられませんから、短期間で住宅市場のシュリンクが起きる可能性も高まることになります(その場合、先にストックである中古住宅の売れ行きが悪化して、価格が下落し始めます)。
金利上昇に、コストプッシュ型の価格上昇、住宅購入優遇策の縮小が重なることになれば、シュリンクの可能性は一気に現実のものとなりかねません。