日銀、金融緩和政策を「軌道修正」 住宅ローン金利への影響は?...専門家が解説(中山登志朗)

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植田新体制になって3か月 政策金利の軌道修正開始で、円安是正にも効果?

   このような軌道修正の背景には、2023年度の物価上昇率の見通しを2.5%に上方修正したことが挙げられます(2024年度は1.9%、2025年度も1.6%と見通しが2%以下であることにも留意が必要です)。

   植田総裁は、欧米でのインフレ抑制の効果がなかなか上がらないことについて、以前から物価上昇に対して、金融政策が後手に回るリスクを指摘しています。ですから今回の軌道修正は、先んじてインフレ対策を講じたことを示唆するものともなりました。

   また、主に日米間で拡がる政策金利ギャップによって発生している急激な円安についても対応する結果となりました。7月28日の為替レートは1ドル139円台と1円弱程度、ユーロに対しては152円台と3円程度急伸。

   このことからも、今回の軌道修正による円安是正の効果が表れたと言えます。ただし、その効果は数日で失われています。

   なお、この修正措置は公表当日から運用が開始されましたが、同日(7月28日)の長期金利は一時0.575%と9年ぶりの高水準に達したものの、その後、0.540%と前日から0.1ポイントの上昇(上昇幅としては大きいですが)に落ち着きました。1.0%という数字に言及するレベルの急激な上昇は発生しませんでした。

   これは債券市場の受け止めが「黒田バズーカ」のようなビッグ・サプライズではなく、7月7日に金融政策決定会合に先んじて公開された内田副総裁の発言を通じて、何らか動きがあるとの事前観測の範囲内には収まっていたことを示しています。

   それだけ今回の措置は慎重に進められたということがわかります。

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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