経済アナリストとして活躍しながら、多くのメディア出演をこなしている馬渕磨理子さんが、自身の働き方の秘訣を披露した。本書「収入10倍アップ 超速仕事術」(PHP研究所)を読むと、多忙な日々のなかで、自分の「軸」を持って仕事をすることの大切さが伝わってくる。
「収入10倍アップ 超速仕事術」(馬渕磨理子)PHP研究所
著者の馬渕磨理子さんは、同志社大学法学部卒業、京都大学公共政策大学院修了、公共政策修士。医療法人を経て、2015年、独立系金融情報配信会社のアナリストに転身。2017年からは日本クラウドキャピタル(現FUNDINNO)にも籍を置き、日本初の未上場マーケットアナリスト兼マーケティング担当として活動。一般社団法人日本金融経済研究所の代表理事を務める。
年間200回以上の講演、メディア出演200本以上、執筆や連載は300本近くをこなし、さらに年間150社の企業取材を自分のKPI(重要業績評価指標)に設定しているという。
会社員時代に260万円だった年収は、たった2年で10倍以上に膨れ上がったことから、本書のタイトルが付いたようだ。
自分の「軸」を持ち、仕事を「捨てる」
そんな馬渕さんが最初に強調しているのが、次の2つのことだ。
・自分の「軸」を持つ
・仕事を「捨てる」
後者については、少し説明が必要だろう。「仕事を任せたい」と言われても、キャパオーバーであれば、断る勇気を持つことだという。断ることによって、次の「価値ある仕事」につながるそうだ。
本書は、5つの章からなる。「なるほど」と思ったエッセンスを抜粋して紹介しよう。
1 会話術
ビジネスにおいて最も信頼されるコミュニケーションスキルとは、ロジカルに伝える力でも、流暢に説明する能力でもないという。自然な声で、自然な言葉で、自分の考えを伝えることだ。
馬渕さんが普段意識している話し方はとてもシンプルなものだ。
・高齢の方が聞き取れるくらいの「スピード」と「声のトーン」で話す
・中学生でもわかる「言葉」を使って話す
・ネットや人から見聞きした情報ではなく、「自分の考え」を話す
彼女が出演するラジオ番組をたまに聞くと、これらのポイントを押さえているためか、とても聞きやすく、経済情報もすんなり頭に入る。
取材や営業訪問で相手企業に出向く場合には、「当たり前メモ」で相手の気分を上げる、というのも使えるテクニックだろう。
たとえば、良い決算発表した企業への質問項目は次の通りだ。
・今回の決算の内容でなぜ、数字が良かったのか?
・一時的なものなのか、継続的なものなのか?
・今期の見通しの着地はどうなりそうか?
・成長が続く見通しならば、どんな戦略を考えているのか?
・KPIの進捗はどうか?
どんな業種でも応用できるので、自分の業務に合わせた形で使ってほしいという。
2 気づかい
多くの経営者に会う馬渕さんが気付いたことがある。できる経営者は「9割」相手にしゃべらせることだという。また、成功する経営者は「かわいらしい」そうだ。そのポイントは自然な笑顔だ。
馬渕さんが一緒に仕事をしたい人の第1の条件は「返事(レス)が早い人」だという。経営者の場合は、フェイスブックのメッセンジャーのやり取りが多いが、遅くとも1~2時間で返事が来るケースがほとんどだそうだ。「予定が未定でも、アポイントの調整は最優先で」と、書いている。