日本企業のロシア取引、1年で3割減少 水産物や中古車など、一部では取引活発化も...

初めての方ご注目!プロミスなら最短1時間融資でお急ぎでも大丈夫!

   日本企業の「ロシア」との直接・間接的な取引が、1年間で3割減少したことが帝国データバンクの調べでわかった。2023年8月2日の発表だ。

   対ロシアとの取引がある企業は2022年3月末時点で1万5287社だったが、今年3月末では1万928社になった。

   ただ、北海道で対ロシアとの輸出入企業が大幅に増加。水産関連産業で目立つなど、一部の物品は取引が活発化していることもわかった。

「対ロ輸出」関連の日本企業は4割減

   2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵攻から1年半が経過した。

   この間、欧米各国では国際的な決済ネットワーク「SWIFT」から、ロシアを締め出すなどの経済制裁を課してきた。そのほか、ロシアからの事業撤退や計画の凍結などを相次いで決定、官民で「脱ロシア」を進めてきた。

   日本でも、政府による対ロシア制裁の一環として半導体を禁輸対象とするなど、欧米と歩調を合わせてきた。

   ただ、水産物など一部の品目は制裁が見送られたことで、日本企業の対ロシア供給網(サプライチェーン)は当初想定されたほどの混乱が発生していない。

   エネルギーや原材料の調達確保などを背景に、現地事業を継続する企業もあり、ロシア事業をめぐる経営判断は二分された状態が続いている。

   そうしたなか、在ロシアの企業と直接取引(貿易)を行う日本企業は、2023年3月現在で国内に295社あることがわかった。

   また、こうした直接輸入・輸出企業と取引関係にある企業は全国に1万633社あることが判明し、ロシアと直接・間接的に取引のある企業は全国で最大1万928社にのぼるという。

   ロシアのウクライナ侵攻が本格化した22年3月時点と比べると、ロシアの企業と直接取引する企業数は43社、関連する取引企業も4316社とそれぞれ減少。その結果、ロシアと直接・間接的に取引でつながりのある企業は1年間で4359社、28.5%減少した。【図1参照】

図1 対ロシアの取引企業数は2022年3月に1万5287社あった(帝国データバンク調べ)
図1 対ロシアの取引企業数は2022年3月に1万5287社あった(帝国データバンク調べ)

水産物「対ロ輸出」制裁の対象外 スーパー、外食向け仕入れ...

   対ロシアの取引企業を影響度別にみると、原材料をロシアから仕入れたり、主力取引先がロシアをサプライチェーンにしたりするなど、対ロシア貿易の動向が経営に影響を及ぼす恐れのある日本企業は3184社となり、22年から31.6%減少した。

   対ロシア輸出・輸入別にみると、特に「輸出」関連の取引で大幅に減少。「直接取引」の企業数は微減だったものの、関連する取引企業が大幅に減少して、輸出全体で4567社、41.6%減少した。

   取扱品目では、対ロ輸出が大きく増えた中古自動車や、生産設備など機械・設備が多く、昨年時点から大きな変化はみられない。取引企業のすそ野が広い大手完成車メーカーや機械メーカーが、対ロシア向け取引などを停止したことが大きく影響した。

   一方、対ロ禁輸制裁の対象外となる食品などでは、ロシア向け需要の高まりから取扱高が伸長したケースもみられた。

   「輸入」関連の取引は149社、3.2%増加した。直接輸入を行う企業は昨年から2割超の減少となったものの、関連取引企業の増加が影響したかたちだ。

   取扱品目では、ウニやイクラ、カニをはじめとした水産物など食品に加え、建築資材向けの木材などが多くを占めた。

   ウクライナ侵攻によって、ロシアからの調達が困難となり取引を解消した企業もある。だが、その一方で、水産物が対ロ禁輸の制裁の対象外であることを背景に、スーパーや外食産業向けに仕入れるケースがみられた。

   総じて、日本企業の対ロシア輸出入動向では、対ロ禁輸制裁対象外の品目を中心に取引活動が続いている。

kaisha_20230804154032.png
図2 生鮮魚介卸売向け輸入、2023年は前年比148社増(帝国データバンク調べ)

北海道、対ロシア輸入金額はなんと過去最高!

   対ロシアの取引企業を地域別にみると、2022年から23年にかけてロシアとの取引社数が増えたのは「北海道」と「東北」の2地域だった。

   なかでも、北海道は水産食料品製造や生鮮魚介卸など、水産関連産業の企業で増加がみられた。22年のロシア産水産物の輸入額は、中国やチリ、米国に次いで4番目に多い。このほか、対ロ輸入金額では、旧ソ連からロシアに移行して以後、過去最高を記録するなど、存在感が増している。【図3参照】

   こうしたなか、日本近海の不漁、極東ロシアでの生産能力の向上などに加え、禁輸となった米国以外の輸出先として日本向けの輸出量が拡大したことを背景に、安価で良質な水産物を求めた業者の取引が増えるなどの影響もみられる。

   また、他の7地域では昨年から減少。なかでも、「関東」や「中部」、「北陸」では昨年から30%を超える大幅な減少となった。

   半導体や化学物質など、ロシアの軍事能力の強化につながるような重要品目が輸出禁止リストに加わり、精密機械、半導体といった各種部品で輸出が大幅に減少したことが影響した。

   特に関東や中部では、日本や欧米の大手完成車メーカーがロシア国内の生産から相次ぎ撤退したことで、数千社に及ぶ自動車産業に影響したことが要因となった。

kaisha_20230804154052.png
図3 対ロシアの取引企業が増えたのは北海道と東北だけ(帝国データバンク調べ)

750品目もの新たな「対ロ禁輸」追加措置 輸出、さらに減少?

   政府は、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対して、半導体などのハイテク製品、工作機械など軍事転用が可能な品目、酒類などについて輸出入を禁じるなど、欧米諸国と歩調を合わせた対ロ制裁措置に踏み切った。

   ロシアとの取引がリスクとして認識されつつあったことで、直接的にロシアと取引を行う日本企業は取引の縮小や解消を余儀なくされるケースも出てくるとみられた。

   加えて、こうした企業と仕入れや納入などの関係を持つ二次取引先でも代替調達先の確保といった対応を迫られるなど、相応の混乱が想定された。

   帝国データバンクは、

「実際には中古車や水産物など制裁対象外の物品を中心に活発に取引された傾向がみられたほか、対ロシアの取引社数も1年間で3割減にとどまり、当初想定されたほどの大きな混乱はみられなかった。欧米のグローバル企業でも、直接的な対ロ制裁の対象外である日用品や製薬分野などではロシアビジネスを続行するケースが多くみられるなど、各企業で対応の足並みが揃っていなかった。
日本企業でも中国や韓国など第三国を経由したロシア産食品を取り扱うケースもあり、取引関係における完全な「脱ロシア」は、1年を経て容易ではない実態も浮き彫りとなっている」

   としている。

   そうしたなか、政府は8月9日以降、新たに排気量1.9リットル超のガソリン車や繊維製品など、対ロシア輸出額の2割相当、約750品目を新たな禁輸対象とする。

   「ロシアとの取引品目が『侵略に重要なすべての品目』へと広がるなか、日本企業の対ロシア取引社数は輸出を中心にさらに減少する可能性がある」とみている。

kaisha_20230804154110.png
対ロシア輸出入企業と国内サプライチェーンの状況(出典:帝国データバンク)

   なお、調査はロシア国内の現地企業などと取引(輸出入)を行う日本企業と、関連するサプライチェーン企業について分析。直接取引(貿易)企業とは、帝国データバンクの調査報告書データから判明したロシア国内の企業(現地法人など)と取引を直接行う企業。二次取引先企業とは、直接貿易企業と取引関係にある企業で、ロシアと間接的な貿易関係の有無は含めていない。なお、取引関係の有無は各調査時点の情報に基づく。

   同様の調査は、ロシアによるウクライナ侵攻直後の2022年3月に続き2回目。

姉妹サイト