2005年にも強い批判にさらされ...政府税調の苦い過去 岸田首相、支持率低下への焦りも
とはいえ、疑問は残る。
なぜなら、政府税調は、首相の諮問機関という位置づけだ。学識者で構成され、税制や財政政策に関する大きな方向性を示す役割を担う。
実際に税制改正の内容を決めるのは与党の自民党税調、公明党税調でつくる与党税調だから、例年であれば政府税調の答申が話題になることはほとんどない。
なぜ官邸は今回に限って、ここまで危機感を募らせるのか。
「サラリーマン増税という響きがまずい。政府には苦い記憶があるからね」
こう解説するのは霞が関のベテラン職員だ。
政府税調は2005年にも強い批判にさらされた。当時会長だった石弘光氏(元一橋大学長、故人)が所得税改革の必要性を訴える中で「サラリーマンに頑張ってもらうしかない」と発言した。
これがサラリーマン増税と報じたられ、政府・与党は対応に追われた。
今回も2005年と同様、実際に増税に直結するようなことが書き込まれているわけではない。財務省幹部は「答申を読んでもらえば、誤解は一発で解けるはずだ」と強調する。
しかし、タイミングが悪かった。
折しもマイナンバーカードのトラブルをめぐり、岸田政権の支持率は下がり続けている。夏が終われば、内閣改造や補正予算の検討、2024年度当初予算の編成などが動き出すが、どれも支持率回復につながる決定打とはなり得ない。
そんな八方塞がり状況に突然、沸き起こったのがサラリーマン増税批判だった。予想外の事態に首相は我慢できず、自ら弁明に乗り出したのだろう。
与党幹部はこう語る。
「首相にとっては災難だったね。サラリーマン増税ぐらいであれだけ慌てるのは、官邸が支持率低下に焦りを深めている証拠だろう」
(ジャーナリスト 白井俊郎)