未上場企業で、監理規制がなかったという問題点 取締役会が開かれた形跡もなく
ところで、今回の報道の中で個人的に一番気になっているのは、従業員6000人、年商7000億円と言われる大企業がなぜ、損保不正請求だけでなく、不正な修理や契約とは名ばかりの強引な車の買取、社内での日常的なパワハラ、違法な街路樹伐採...、続々明るみに出ているような不正、違法がまかり通っていたのかです。
最大の盲点は、同社が未上場企業であったということにあると思っています。上場企業の場合は、投資家保護の観点から、ガバナンスに関してさまざまな監理規制がかかっているのですが、未上場企業は会社法上「大会社」に分類されるビッグモーターでも、株主少数につきその規制はほとんどないのです。
損保不正請求を調べた特別調査委員会の報告書によれば、取締役会設置会社の同社において取締役会が開かれた形跡はなく、法で義務付けられた監査役も1名だけで1か月にわずか1、2店舗回って簡単なヒアリングをしているのみ、という状況だったといいます。
これでは経営に対してノーチェックも同然です。経営陣がどのような独善的、高圧的な経営をしていても、また、現場が悪事に手を染めていても気付きようがない、そんな状況下で一連の不祥事は起きていたとわかります。
たしかにオーナー系企業の場合、会社の所有と執行を同じ人物がおこなうことで、ワンマン社長の強引な経営が組織にブラックやグレーな動きを強いるようなことにもなりやすい、とはいえるのかもしれません。
しかし、ビッグモーターほどの大企業では従業員やお客様や取引先の数も多く、その悪事が表面化した時には、確実に社会問題化するような存在なのです。同社の経営陣は、自己が負うべき社会的責任の重さを省みることなく、自己本位の経営を続けてきたという点で、経営者として重大な過失を犯していたといえるでしょう。