「健康だけど元気のない人、病気なのに元気に見える人」「笑顔でたくさんの人に囲まれている人、いつも寂しそうにひとりでいる人」「いつもツイている人、うまくいかない人」。これらはすべて、その人が持つエネルギーの違いで決まるという。では、エネルギーとは何か。今回紹介する本とともに、ひも解いてみたい。
『エネルギーを整える。』(三上隆之著)実業之日本社
朝、目が覚めて、楽しみでワクワクしますか?
まだ現在の医学では解明されていないが、医学的な数値で見ると、同レベルの健康状態にある人でも、実体はそれぞれである。この違いは、個々が持つエネルギーの差だと、著者の三上さんは言う。
「若い人ががんを患うと進行が速いといわれますが、エネルギーの視点で捉えると、若い人のエネルギーにはキレがあるということです。一度、免疫力が下がると、悪化への進行が加速しやすいのですが、逆に、免疫力が上がる方向に動き出すと、今度は改善への進行が加速する側面もあるのです」(三上さん)
「同じ病気と診断されてもエネルギーの状態の違いで、重症度や予後の経過に大きな差が現れます。『病は気から』といわれますが、まさにその通りなのです。朝、目が覚めて『起きたくない』と思うのか。その日が楽しみでワクワクし、充実感に満ちあふれた人生を過ごすのか。すべてあなたのエネルギーによって決まるのです」(同)
三上さんには、カイロプラクターの側面がある。これは、ギリシャ語で「カイロ→手」、「プラクティック→技術」を意味する造語で、脊椎を中心とした身体の構造と機能に注目した手技療法を特徴とするヘルスケア(広義の医療)を指す。身体を整えること、つまりエネルギーを整える専門家ということになる。
私たちはエネルギーに囲まれている
じつは、筆者である私もカイロプラクティックの世話になっており、仕事帰りやジム帰りによく施術を受けていた。「気を整える」「気の巡り」という言葉を耳にすることは多いが、三上さんはこれらの「気」の流れを、エネルギーと表現している。
エネルギーは私たちの目には見えない。しかし、元気な人を見れば「あの人はエネルギッシュだな」と思ったり、ひどく疲れているときは「もうエネルギー切れだ」と感じたりするような経験は誰にでもあるはずだ。
エネルギーは、目に見えるものではないが、誰しもエネルギーが自分の中に存在していることを感覚的、体験的に知っている、と三上さんは言う。
「今いる空間、身に着けている衣類や装飾品、隣で仕事をしている人、ついさっき届いたメールの内容...実はそのすべてのエネルギーから私たちは何かしらの影響を受けているのです。家に帰り、パジャマやスエットを着るとゆったりとした気持ちになる一方、朝を迎えてスーツや仕事着に着替えるとシャキッとした気持ちになりますよね」(三上さん)
人は自らの意思だけで動いているのではなく、周囲の人やモノからエネルギーの影響を受けている、ということになる。
エネルギーをどのように受け止めたらいいか?
三上さんは、エネルギーと体の関係を次のように例えている。
「ラジオに例えるとイメージしやすいでしょう。ラジオは各局からいろいろな周波数の電波が送信され、周波数が一致すると番組を聴くことができます。これがエネルギーでいえば、メッセージの送受信がうまくいった心身の調和がとれている状態です。逆に周波数が一致しないと、受信できませんから番組を聴くことはできません」(三上さん)
「私たちが心身の不調として感じる内側からのメッセージの裏には、外側からのいろいろなメッセージの影響があるということです。それに気づくことが、自分のエネルギーを整える第一歩となると考えています」(同)
在宅勤務が増えたいま、長時間座りっ放しの状態が続いたことで、体の不調を訴える人が増えている。たとえば、「何だか調子が悪い」「すっきりしない」といった具合である。この機会に振り返ってみよう。体のエネルギーを整えることで、健康で活力のある生活をおくれるようになるかもしれない。(尾藤克之)