ホリエモンが予測した10年後のニッポン

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   ホリエモンこと堀江貴文さんが、10年後の未来予測を試みたのが、本書「2035 10年後のニッポン」(徳間書店)である。AIやテクノロジー、お金、経済、ビジネス、働き方など、幅広いジャンルにわたった予測とは?

「2035 10年後のニッポン」(堀江貴文著)徳間書店

ChatGPTがもう1人の「自分」になる

   いま話題の生成AI(人工知能)ChatGPTについて、いつでもどこでもそばにいて、特異な能力でこちらを助けてくれる。「ついにドラえもんが誕生した!」と、高く評価している。

   コンテンツ産業を筆頭に、金融、医療、教育、交通......。そのすべての根底から変え、私たちの生活を一変させ、「10年後の日本の風景はいまとまったく別物になる」と予測する。

   堀江さんは、すでに日常業務の一部をChatGPTでこなしているそうだ。たとえば、ある新刊書籍に推薦コメントを寄せてほしいと依頼されると、ChatGPTを利用する。

   「この本の推薦コメントを考えてください。40文字以内で」と入力し、その本の概要をコピペする。すると、たちまちコメント案がいくらでも出てきて、そこから気に入ったものを採用する。ただし、より自分らしくするため、少し手直しすることもある。

   ただし、ChatGPTはインターネットの中の膨大なテキストから学習しているため、どこかで読んだような既視感がつきまとうという。ChatGPTが真のシンギュラリティ(技術的特異点)を果たすうえで、最後にして最大の壁は個性の発揮にあるという。

   最新のChatGPTでは、個別学習が可能になった。それぞれのユーザーがそのアカウントごとにデータを記憶させられる。つまり、ChatGPTをカスタマイズできる。

   ただし、ChatGPTの記憶力(容量)はいまのところ2万5000字にとどまる(日本語の場合)。だからカバーできる範囲は限定的だが、近い将来、記憶力は飛躍的に増強されると見ている。

   すると、どうなるのか。ユーザーの履歴書や日記、メール文、さらに仕事でつくった資料、それらを手当たり次第アップすることで、ChatGPTに個性を植え付けられる。

   つまり、自分の分身をつくれる。私という「個性」がもうひとつ誕生する。そんな未来が近くまで来ているというのだ。

働き方が変わる

   2035年前後に日本の労働人口の49%にあたる職業がAIに代替されると、いまから10年近く前、野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究が予測したが、見事に的中しそうだという。

   今後、ホワイトカラーの9割がAIによって職を失うと、堀江さんは指摘する。ChatGPTのような対話型の生成AIをあつかううえで、スキルはなにもいらない。だれかに話しかけるように言葉で指示するだけだ。いまのうちに自分の強みに磨きをかけ、人材価値を高めておくべきだとアドバイスしている。

   クリエイティブの世界でも、そうなっていくと予測する。たとえば、生成AIのつくったアート写真が、プロ写真家のそれを凌駕するようになる。国際的な写真コンテストで、架空のAI画像が入選するという事態が起きた。多数の「素人+AI」と、一部の「才能あるクリエーター」という構図になっていきそうだという。

   お金と経済についても予測している。もっとも気になる、資産形成についてこうアドバイスしている。

「いちばん手っ取り早いのは『インデックスファンド』という運用商品に投資することだろう。インデックスファンドとは、日本のTOPIXなどの株価指数(インデックス)に連動するように設計された投資信託。このうち『全世界株式』などの名称がついている商品を選べば、世界中の株式に分散投資することができる」

   「長期・分散・低コスト」という投資の鉄則は、10年後の未来でも不変だという。

   仕事や暮らしはどうなるのか。リモートワークで自由度の高い働き方をする人がいる一方で、昔ながらの管理、拘束された働き方を継続する人の二極化が顕著になっていくという。

   日本再生の鍵を握るのは、スタートアップ企業で、テクノロジーのみならず、飲食、観光、エンタメ、ロケット関連、このあたりの領域でイノベーションが起こると予測している。

「あらゆる局面でパラダイムシフトが起きる。本質を見抜け」

   そして、エリートは大企業に、野心的な人材はスタートアップなどのベンチャー企業に、それ以外の人は「せどり」などのミクロな起業に乗り出し、近い将来、日本の産業はそうして三極化すると見ている。

   ガラケーで起きた惨劇は自動車産業で繰り返されるという恐ろしい予測も。EV(電気自動車)の登場により、テスラがトヨタ自動車を王者の座から引きずり下ろすという未来を予測している。

   現在、トヨタの業績は絶好調だ。すぐに経営が傾くことはなし。「でも、じわじわ弱っていく。このままなら10年後、いまのトヨタの姿はないだろう」。

   このほかにも、「ジャパニーズコンテンツが韓流に勝つ」「廃れるメタバース」「人工の太陽=核融合がいよいよ稼働する」「宇宙にある低軌道衛星によって、通信の破壊的革命が起きる」など、興味深い予測をしている。

   ChatGPTなどテクノロジーがもたらす変化を、「怖い」と取るか、「楽しみ」と取るか、まずは未来を知ることが大切だ、と警告している。

   堀江さんの「あらゆる局面でパラダイムシフトが起きる。本質を見抜け」という言葉を肝に銘じたい。(渡辺淳悦)

「2035 10年後のニッポン」
堀江貴文著
徳間書店
1540円(税込)

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