保険金の水増し請求、店舗前の街路樹の無許可伐採、前副社長の言語を絶するパワハラ......。とどまるところを知らない中古車販売大手の「ビッグモーター」(東京都港区)の不正の数々だが、行政の追及と世論の反発が激しく、業績悪化は免れない状況だ。
そんななか、帝国データバンクが2023年8月3日、「特別企画:ビッグモーターのサプライチェーン調査」を発表した。
同社の取引先企業は全国に410社あり、派生する売上高は224億円に達する。こうした業者たちは今後どうなるのか。ネット民からは「前経営者親子への処罰がない限り、救われない」という声があがっている。
取引先上位は、自動車部品と店舗建設会社
中古車販売という業態柄、個人との売買取引が中心となるビッグモーターだが、部品供給や店舗建設など、仕入や下請け業務に関わるサプライチェーン企業も多く存在する。ビッグモーターの業績が悪化すれば、これらの企業への影響も避けられない。
帝国データバンクでは、保有する2023年時点の「商流圏~売上高依存度推計データ」をもとに、ビッグモーターに部品などのモノやサービスを提供する周辺産業(商流圏)の特徴や取引規模を推計した。
ビッグモーターを頂点としたサプライチェーン企業(売上高の1%以上を依存している企業)は、全国に410社ある。うち直接取引先は156社で、平均依存度は10.9%。間接取引のある二次取引先は229社(同3.2%)、三次取引先は25社(同2.0%)だった【図表1】。
この中には、現在、ビッグモーターに社員を出向させ、不正な保険金請求の共同関与が疑われており、金融庁の調査が進んでいる損害保険大手各社は含まれていない。
サプライチェーン企業にもたらされる売上高の合計は224億円に上る。
業種別に見ると、店舗での整備業務などに関わる「自動車部分品・付属品卸売業」が40社で最も多く、全体の約1割を占めている。次いで「建築工事」(22社)、「内装工事」(20社)と続き、店舗建設に関わる建設(工事)関連業種が上位を占めていることが分かった【図表2】。
ビッグモーターが、部品卸や運送業、中古車小売業者など自動車に関わる業者だけでなく、全国に260店舗以上もの多店舗(大規模店舗)展開の戦略を採っているため、建設業者がサプライチェーン全体の4割超(171社)を占めていることが特徴のひとつといえる。