例年にないような厳しい暑さが続く中、ひんやりと涼しいひとときを提供してくれるアイスの人気が高まっている。
メーカー各社はさまざまな新商品を投入しているほか、「暑さが厳しくなるのに従い、贈り物にアイスを選ぶ人が増えた」(百貨店関係者)といい、帰省時などの手土産にも重宝されている。
アイスの市場規模はここ数年、過去最高を更新しており、2023年はさらなる拡大に期待が高まっている。
氷菓系から、プレミアムなアイスまで 観光地では「忍者刀アイス」が話題に
「気温が30度を超えると、とたんに氷菓系のアイスの売れ行きが活発になる」
東京都内の小売店の店員はそう話す。品切れがないよう、商品の補充にも気を使っている。東京都心でも最高気温が35度を超える猛暑日が続く中、氷菓系のアイスを手にするビジネスマンや観光客もよく目にする。
氷菓系アイスの代表ともいえる赤城乳業(埼玉県深谷市)の「ガリガリ君 ソーダ味」は定番として今夏も好調に売れているが、同社は7~8月にかけて「ガツン、とみかん」や「ガリガリ君 梨」などの夏向けフレーバーを次々投入している。「いろいろな味が楽しめて、あきない」とファンにも好評だ。
コンビニエンスストアなどでは、高級感のあるアイスも好調だ。森永乳業(東京都港区)が「ミルクのおいしさを追求したアイス」とアピールしている「MOW PRIME」なども人気を集めている。
この夏はアフターコロナのムードが広がり、全国の観光地がにぎわっているが、話題性のあるアイスも各地で続々と登場している。
たとえば、岐阜県高山市の「忍者カフェ高山」では7月末から、忍者の刀をイメージした、長さ45センチもある「忍者刀アイス」を発売した。「日本一長いアイス」とPRし、ネットなどでも注目されている。
近年は「冬アイス」も定着 魅力的な多種多彩な商品、単価の高いアイス開発進む
アイスの販売額はこの20年で増加傾向にある。
日本アイスクリーム協会によれば、2022年の販売額は前年比5.2%増の5534億円と3年連続で過去最高を更新した。20年前の2003年(3322億円)の約1.7倍にも膨らみ、人口減少の中でも成長市場になっている。
思えば、かつてアイスは夏の嗜好品という存在だった。
しかし近年は、冬にこたつの中で楽しめる「冬アイス」と呼ばれる新たなジャンルが登場し、広く定着した。アイスはいまや、年間を通して消費される食品になっており、市場規模の拡大につながっている。
さらに「気温が高まっていることも影響しているのではないか」(業界関係者)との見方もある。アイスクリーム協会によれば、日本の平均気温は長期的には100年当たり1.3度の割合で上昇しているといい、特に1990年代以降は高温となる年が多くなっている。これがアイスの消費を増やしている可能性もある。
こうしてアイスを求める人が増える中、メーカー各社は多種多彩な商品や高級感のある単価の高いアイスなどを開発。消費者をつなぎとめるための工夫がさらに需要を高めているようだ。(ジャーナリスト 済田経夫)