新しく国が産後パパ育休制度を新設したが、企業における男性の育児休暇取得率はどうなっているのだろう?
そんななか、ベンチャーサポートグループ(東京都渋谷区)は2023年7月20日、全国の経営者を対象にした「育児休業制度」に関する実態調査の結果を発表した。
調査結果によると、企業経営者が進めたい施策に「育児休業の取得促進」が37.8%、「賃上げ」が26.1%、「育児休業取得者の業務を引き継ぐ社員への『応援手当』の支給」が24.5%となっている。
しかしながら、男性の育児休暇取得率1割未満の企業は61.1%であり、人手不足の問題や部署の周りの社員の負担増など、男性の育児休暇取得促進にはまだまだ課題がありそうだ。
男性の育児休暇が進まない理由「同じ部署に仕事を割り振るために周りの負担増に」「制度が整っていない」
この調査は、2023年5月12日から13日までの間、ゼネラルリサーチ社のモニターを利用したウェブアンケート方式で全国の経営者を対象に、1007人を調査した。
はじめに、自社の女性社員の育児休暇取得率を聞いた。「80%以上」が最多で「40.9%」、次いで「10%未満」が「30.4%」、「10%以上30%未満」が「10.9%」となった。
続いて、自社の男性社員の育児休暇取得率を聞くと、「10%未満」が最多で「61.1%」、「10%以上30%未満」は「14.1%」で次点に。「30%以上50%未満」は「10.3%」、「80%以上」では「9.3%」という結果だった。
つぎに、育児休業制度について、どのような問題を抱えているか質問したところ、「育児休業取得者の業務を引き継ぐ社員の負担が大きい」(29.0%)、「男性社員の育児休業制度が整っていない」(25.6%)、「育児休業を取得しにくい雰囲気がある」(15.7%)、「育児休業からの復帰率が低い」(12.2%)などが上がった。
続いての質問では、「育児休業後はどのような働き方が多いですか?」と聞いた。「フルタイム正社員」は「68.3%」、「時短正社員」は「23.8%」、「パートタイム・アルバイト」は「4.3%」、「退職」は「1.3%」という結果になった。
また、「育児休業後の業務はどのようなケースが多いですか?」と質問した。回答では、「育児休業前と同じ部署や仕事内容に復帰する」が「91.1%」、「育児休業前とは別の部署や仕事内容に異動する」は「7.6%」、「その他」は「1.3%」だった。
一方で、「採用面接において、育児休業制度を重視する求職者は多いと感じますか?」と質問すると、「多い」は「16.8%」、「どちらかといえば多い」は「30.7%」であわせて「47.5%」。「あまり多くない」は「34.9%」、「多くない」は「17.6%」であわせて「52.5%」という結果になった。
さらに、「求人募集において、育児休業の取得率の公表など、育児休業制度の充実をアピールしていますか?」と質問したところ、「はい」と回答した割合は「47.4%」だった。
経営者が「異次元の少子化対策」で関心あること「育児休業の取得促進」「賃上げ」「社員への『応援手当』の支給」
「育児休業取得者がいる場合、どのように業務を補っていますか?」と質問したところ、「同じ部署の社員が業務を負担する」が「71.9%」「別の部署の社員の異動を行う」が「12.9%」、「新たに社員を採用する」は「12.7%」、「その他」は「2.5%」という回答結果となった。
自由回答での業務をどのように補っているか聞いてみると、
<同じ部署の社員が業務を負担する>
・引き継ぎがスムーズなため(30代/女性/大阪府)
・人数が少ない中小零細企業ではなかなか思うように人員を確保できない(60代/男性/広島県)
<別の部署の社員の異動を行う>
・部署の人員に余裕がない(50代/男性/神奈川県)
・他のスタッフの負担軽減(50代/男性/沖縄県)
<新たに社員を採用する>
・気兼ねなく育休を取得できる環境を作るため(60代/男性/埼玉県)
・欠員状態を補充するため、派遣社員を一定期間採用する(60代/男性/東京都)
という意見が上がっている。
日本政府が提唱している「異次元の少子化対策」に関連した質問も行った。 「異次元の少子化対策と関連して企業として取り組みたいことはありますか?」と聞くと、結果は、「育児休業の取得促進」が「37.8%」で最多に。次いで、「賃上げ」が「26.1%」、「育児休業取得者の業務を引き継ぐ社員への『応援手当』の支給」が「24.5%」、「正規雇用による雇用の安定」は「21.3%」などの回答があった。
この調査結果に対してベンチャーサポートグループでは、次のようにコメントしている。
「育児休業制度を重視する求職者が多いと感じている経営者は47.5%に上り、求人募集時に育児休業制度の充実をアピールする企業の割合も47.4%となった。求職者も経営者も、育児休業制度を重視していることがうかがえる」
「政府が掲げる『異次元の少子化対策』に関連して、企業として今後『育児休業の取得促進』、『賃上げ』、『育児休業取得者の業務を引き継ぐ社員への応援手当の支給』などに取り組みたいと考えていることが明らかとなった」
「育児休業制度の実態として、育児休業を取得する人だけでなく、業務を引き継ぐ同じ部署の社員の業務負担の軽減なども課題であることが浮き彫りとなった」