日本の大学生は、在学中に最も有用だったと感じたのは、「大学施設を活用した自主的な学習」で、最も身に付かなかったのは、「外国語の読み・書き・聞く・話す能力」と感じている。文部科学省が2023年7月12日に公表した令和4年(2022年)度の「全国学生調査」では、大学での学びに対する実感が浮き彫りになっている。
この調査は、532大学2083学部に在籍する学部2年生および4年生等95万847人を対象に実施され、10万1072人から回答を得た。
質問項目は、大学で受けた授業の状況、大学での経験とその有用さ、大学教育を通じて知識や能力が身に付いたかなど多岐にわたった45問となっている。
「大学在学中に経験したことで有用だったもの」では、「有用だった」、「ある程度有用だった」、「あまり有用ではなかった」、「有用ではなかった」、「経験していない」を回答の選択肢として質問した。
「有用だった」と感じられたのは「卒業研究」と「短期留学を含む海外留学」
回答のうち、経験していないを除き、有用か否かを見てみると、有用だった(有用だった+ある程度有用だった、以下同じ)が最も高かったのは、「図書館やラーニングスペースなど大学施設を活用した自主的な学習」だった。経験していないが12.0%あるが、経験者では有用だったが91.9%を占めた。
次いで、経験者の中で有用だったとの回答が多かったのは、最終学年生のみが回答している「卒業論文・卒業研究・卒業制作などの教育」で85.6%となっている。
経験していない割合が非常に高いが、経験者にとって有用だったとの評価が高かったのは、短期留学を含む海外留学・海外研修と5日間以上のインターシップで、海外留学は80.8%、インターンシップは79.8%が有用だったと回答している。
半面、語学科目を除き主に英語で行われる授業の履修は、36.3%が経験していないと回答しており、さらに、経験者の中で有用だったとの回答は68.9%と最も低かった。
「専門分野に関する知識・理解」に関しては「身に付いた」と実感
「大学教育で診に就いた知識や能力」を「身に付いた」、「ある程度身に付いた」、「あまり身に付いていない」、「身に付いていない」を回答の選択肢として質問したところ、身に付いたが最も高かったのは「専門分野に関する知識・理解」で、88.7%が身に付いた(身に付いた+ある程度身に付いた、以下同じ)と回答した。
ただし、身に付いた32.7%で、ある程度身に付いた56.0%となっており、身に付いていない(身に付いていない+あまり身に付いていない、以下同じ)も11.2%となっている。(グラフ1)
次いで、身に付いたが高かったのは「将来の仕事につながるような知識・技能」で80.0%となっている。内訳は、身に付いた31.0%、ある程度身に付いた49.0%で、あまり身に付いていない16.5%、身に付いていない3.5%となっている。(グラフ2)
外国語に関しては、低かった「身に付いた」感
ところが、大きな課題となりそうなのが外国語だ。英語の授業が経験者の中で有用だったとの回答が最も低かったが、身に付いたかという質問でも、「外国語を読む力・書く力」で身に付いた43.2%、「外国語を聞く力・話す力」では38.6%にとどまっている。(グラフ3)
「これまでの大学での学び全体を振り返って」の質問では、「そう思う」、「ある程度そう思う」、「あまりそうは思わない」、「そう思わない」を回答の選択肢として質問したところ、「大学が学生に卒業時までに身に付けることを求めている知識や能力を理解している」では、そう思う(そう思う+ある程度そう思う)は79.7%、「大学での学びによって自分自身の成長を実感している」では82.0%と高い割合を示した。
ただ、「授業アンケート等の学生の意見を通じて大学教育が良くなっている」では、そう思わない(あまりそうは思わない+そう思わない、以下同じ)が50.9%と半数を超えている。(グラフ4)
政府は2020年から新学習指導要領にもとづいて小学校での英語教育を実施している。しかし、彼らが社会人になるのは、まだまだ先だ。社会人に最も近い大学生が大学教育の中で、外国語に対して「身に付かなかった」と回答が半数以上にのぼっていることは重く受け止める必要があるだろう。
専門性が高くなれば、それだけ英語などの難易度も上がる。特に、研究開発や技術の分野では多くの論文、資料などは英語で書かれている。日本の国際力を上げるためにも、大学生の語学力の向上は重要なカギになる。