社内情報をチャットGPTに入力する社員
社内情報や企業秘密をチャットGPTに入力しないように企業は求めている。だが、実際には守られていないようだ。
米シリコンバレーのセキュリティベンチャー「サイバーヘイブン」が2023年4月19日付で更新した調査結果によると、顧客企業(社員数合計160万人)の知識労働者のうち9.3%が職場でチャットGPTを利用しており、7.5%が社内データを、4.0%が社外秘データをチャットGPTに入力していた。
また、社外秘データの入力事例の80%は、0.9%の社員によって引き起こされていたというから、ごく少数の問題行動をどうチェックするかが求められている。
雇用への影響も懸念されている。
GPT-4による評価では、会計士・監査人、ニュースアナリスト・記者・ジャーナリスト、弁護士秘書・事務スタッフなど86職種が影響を受けると予想されている。
大手金融のゴールドマン・サックスも、現在の職業の3分の2は、生成AIによって部分的に自動化され、4分の1は代替される可能性があると指摘。世界では3億人の常勤職が自動化される可能性があるという。
このほかにも犯罪への悪用の可能性、著作権をめぐる訴訟、基となるデータは非公開であることなどの問題点を挙げている。
とはいえ、加速度をつけて進化する生成AI。どう対応したらいいのだろう。著者はポイントの1つは、「回答の出来上がり、すなわち成果をイメージできるかどうかだ」としている。
「答え」を想定し、そのクオリティを評価できるかどうか。そのためにはクオリティの高い「問い」が必要で、プロとしての力量が求められる。
「それは、コンテンツの発注から出来上がりのクオリティ管理までができる、編集者やプロデューサーのようなスキルでもある」
チャットGPTの登場は、自らのスキルを改めて問い直すきっかけになるだろう、と結んでいる。(渡辺淳悦)
「チャットGPT vs. 人類」
平和博著
文春新書
990円(税込)