関電・高浜原発の使用済み核燃料の一部、「フランスへ搬出」の奇策...「県外」の約束履行のため「一時逃れ」?

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   関西電力が高浜原発(福井県高浜町)にある使用済み核燃料の一部をフランスに運ぶ研究計画を打ち出したことが、波紋を広げている。関電が「県外搬出」を約束してきた経緯があり、「研究」名目での今回の計画は、約束履行のための「ウルトラC」と評する向きもある。

   ただ、原発の運転停止に追い込まれない状況のなかでの、小手先の「一時逃れ」でしかないのは明らか。原発政策の行き詰まりを改めて印象付けたかたちで、国民の信頼は遠のくばかりだ。

使用済み燃料の5%、フランスへ 関電「約束はひとまず果たされた」

   原発を動かせば使用済み核燃料が発生し、原発施設内の貯蔵プールにたまり続ける。福井県内にある関電の3原発では向こう5~7年で、プールがいっぱいになる見通しだ。そのため、福井県は使用済み燃料を移して一時保管する「中間貯蔵施設」を県外に造るよう求めてきた。

   そこで関電は、2023年末までに中間貯蔵施設の候補地を示すと約束していた。守れなければ、再稼働している美浜3号機(美浜町)、2023年7月28日に再稼働した高浜1号機、9月に再稼働予定の高浜2号機の3基を停止する方針も示していた。

   今回の使用済み核燃料の一部をフランスに運ぶ計画は、年末の期限を控え、6月12日、関電の森望社長が福井県の杉本達治知事を訪ねて説明した。

   具体的には、高浜原発に保管されている使用済みのウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料約10トンと、通常の使用済み燃料約190トンの計約200トンをフランスに移送する。これは、関電が抱える使用済み燃料のわずか5%だという。

   フランスへの輸送で、関電は「県外に搬出される意味で中間貯蔵と同等の意義がある。約束はひとまず果たされた」との認識を示している。

   ちなみに、搬送の目的は「MOX燃料の再処理の実証研究」。

   業界団体である電気事業連合会が実施する研究で、関電、四国電力、九州電力が保管している使用済みMOX燃料の中で、関電のプルトニウム含有量が最も多く、研究に適していると評価されたという。

行き詰まる「核燃料サイクル」の国策 使用済み燃料の再処理工場は、予定から25年以上遅れ...いまだにめど立たず

   もっとも、この問題の根本には、使用済み燃料の処理の道筋がみえないことがある。

   フランスへの輸送に関しても、これまで行き場のなかった使用済み燃料を一時的に海外に運んだとしても、問題の先送りに過ぎない。

   使用済燃料の再利用をめぐっては、以下のような背景がある。

   日本は使用済み燃料を再処理して、原発の燃料として再利用する「核燃料サイクル」を国策に掲げている。しかし、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場はトラブルが相次いだ。そのため、完成予定から25年以上が経過し、26回の延期を経ても完成に至っていない。

   そもそも、核燃料サイクルは、高速(増殖)炉でMOX燃料を使い、使用済みMOX燃料も再処理し、再び高速炉で使用するのが本来の姿だった。だが、サイクルに必須の高速炉開発が原型炉「もんじゅ」の廃炉で頓挫し、計画は事実上破綻している。

   かくて、各地の原発内では保管する使用済み核燃料が増え続けている。

   かといって、原発推進の国の政策は変わらない。とくに、東京電力福島第1原発事故後の2013年、原発の運転期間を「原則40年、最大延長20年」とするルールが定められた。

   もとより、延長には地元同意が必要だ。関電は2020年以降、福井県内で該当する美浜3号機と、高浜1、2号機の3基に関する手続きを進め、その過程で使用済み燃料の県外搬出に関して前記の(23年までに中間貯蔵施設の候補地を示す)約束をした。だから、福井県が40年超の運転を実質的に容認したという経緯がある。

   なお、「中間貯蔵施設」とは、再処理工場の完成が見通せないなか、一時的に保管するが施設のことだ。そもそも、関電は2015年、「30年ごろに2000トン規模で中間貯蔵施設の操業を開始する」との計画を策定しているが、そのめどは立っていない。

   そのうえ、中間貯蔵施設は、国内では東京電力ホールディングス(HD)と日本原子力発電は青森県むつ市に共同で建設しているだけ。関電はその施設の共同利用を目指したが、むつ市に拒まれ、他の候補地も見つからず、23年までに候補地を示すという約束の履行が不可能になっていた。

   以上が、今回のフランスへの移送決定に至る事態の流れだ。

経産省と関電が「示し合わせた」計画? 福井県・杉本知事「内容を精査したい」慎重に見極め

   西村康稔経済産業相は関電のフランス移送計画表明を受け、6月13日の閣議後記者会見で、

「今回の対応は使用済み燃料の海外搬出という意味で中間貯蔵と同等の意義がある。関電が福井県にこれまでしてきた約束を実現するうえで、重要な意義があると考えている」

   と、関電と同様の認識を示した。経産省と関電が「示し合わせた」計画ということだろう。

   そもそも、5月に西村経産相とフランスのパニエリュナシェ・エネルギー移行相が「使用済みMOX燃料の再処理を見通すための研究を続ける」という共同声明に署名し、今回の計画のレールを引いていたのだ。

   福井県は今のところ、状況を慎重に見極める姿勢だ。

   6月12日、関電から説明を受けた杉本知事は「内容を精査したい。原発が立地する自治体や県議会の意見を聞いて総合的に判断したい」と、回答を留保した。さらに県は国に対し、関電の意向を評価した理由など、4項目を再説明するよう要求。

   杉本知事は13日の県議会予算決算特別委員会で、「(立地市町では)約束には至っていないとの思いがにじみ出ている。国からしっかりした回答を引き出し、立地地域や県議会の意見を聞いて総合的に判断したい」と答弁している。

   年内というタイムリミットをにらみ、国、県、関電の三者のギリギリの調整が続く。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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